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2030年代の実用化を目指す第6世代(6G)移動通信システムの開発で、日本企業が対応を加速させている。米ワシントンで4月16日に開かれた日米首脳会談後の共同文書では、次世代通信分野の研究開発に両国合わせて45億ドル(約4900億円)を投資することを確認しており、日本企業も歩調を合わせる。日本は5Gに関しては基地局技術などで中国などに後れをとっており、6Gでは技術の標準化を主導するなどして挽回を図る考えだ。
6Gでの通信速度は5Gの100倍、現在の4Gと比べると千倍になるとされる。通信で生じる遅延の少なさや多くの機器を同時に接続できる性能も5Gより10倍超向上するという。多数の機器が大量のデータを同時に送受信できるようになり、交通量の多い道路でも自動運転の安全性が高まるほか、ミスが許されない医療分野でも、高い精度の遠隔手術などが可能になる。
こうした中、NTTは次世代の通信網の構築を見据え、NTTドコモを完全子会社化。ドコモとNTTコミュニケーションズの連携も深め、無線通信と固定通信の融合を図る。さらにNECなどとも連携して技術の共通規格を定める標準化を進め、特定のメーカーに頼らず異なるメーカーの基地局製品を組み合わせて使える「オープンRAN」などの実現を描く。
また、KDDI(au)は30年までに次世代通信網に2兆円を投じる方針を表明。トヨタ自動車と資本提携で関係を強化するなど、6G時代を見据えた布石を打つ。ソフトバンクも岐阜大学などと連携し、6Gで使われる周波数帯での超小型アンテナを使用した無線通信に成功した。ニコンと共同で光無線技術を開発するなど、新たな次世代通信を模索している。楽天も遅延の少ない通信技術の研究で東京工業大と連携した。
6Gが実現すれば、これまで電波の届かなかった海中や宇宙でも高速通信が可能。無線技術を発展させた非接触給電で電線をつながなくても機器が自動で充電できるともされる。人々の生体情報をリアルタイムで通信し、人工知能(AI)が健康に関する助言をしてくれるなど、生活の大きな変化も見込まれる。
日米が次世代通信分野に注力する背景には日米の企業が基地局建設などの基礎技術で中国の後塵(こうじん)を拝してきたという事情がある。6Gの世界では通信分野が安全保障にもたらす影響も重要度を増すだけに日米にとって譲れない戦いだ。
筆者:高木克聡(産経新聞)