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収穫間近の茶畑が標高350メートルの山あいに広がる。畑の真ん中にしつらえた木製テラスに座れば、眼下に広がる新緑を独り占めできる。
静岡市清水区にある「天空の茶の間」(豊好園〈ほうこうえん〉)は急斜面の茶畑にせり出すようなテラスで、季節と天候によっては富士山や雲海も見られる人気の場所だ。
静岡県内6カ所の茶畑で提供している体験プログラム「茶の間」の一つで、目の前の畑で採れた茶葉から厳選したお茶が楽しめる。2年前に始まり、これまで20、30代を中心に約3500人が利用している。
茶の間は同県中部の観光振興に取り組む「するが企画観光局」(静岡市)が運営する。企画から関わる鈴木杏佳さん(28)は「自分が静岡のお茶を飲んで育ってきたので、近年の茶葉需要の低下をなんとかしたかった。急須でお茶を飲む習慣がない若い人にも良さを知ってほしい」と話す。
自然を満喫できる茶の間は「3密」を回避できるレジャーとしても注目される。同県磐田市から訪れた才津パロマさん(24)は「コロナ禍の休日の過ごし方を探していた。誰もいない自然の中で気持ち良く、お茶もおいしい」と話した。
事前予約制で現在は緊急事態宣言などの対象地域の利用者を制限しているが、1カ月先まで予約が埋まるテラスもあるという。
名産地・静岡で広まる新たなお茶の魅力。絶景の茶畑で風に吹かれ鳥のさえずりを聞きながら、五感で味わってもらいたい。
筆者:宮崎瑞穂(産経新聞写真報道局)