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最高裁大法廷は、「夫婦別姓」を認めない民法の規定を再び「合憲」と判断した。
夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めた平成27年の最高裁判決を踏襲した。妥当な判断である。
事実婚の男女3組が、夫婦別姓を希望して婚姻届を提出したが、不受理となり、家事審判を申し立て、最高裁に特別抗告していた。
女性の社会進出や世論など最近の情勢変化を踏まえた判断が注目されたが、最高裁は決定理由で、社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、6年前の判断を変更すべきとは認められない―と判示した。
27年の最高裁の判断を通し、夫婦同一の姓について、男女差別を助長したり、人格を傷つけたりする制度ではないことも明確になっている。
最高裁はこのときと同様、「制度のあり方は国会で論ぜられ判断されるべき事柄」と指摘した。
平成8年に法制審議会が、夫婦で同じ姓にするか、旧姓をそれぞれ名乗るか選べる選択的夫婦別姓の導入を答申して25年たつ。法制化に至らなかったのは、立法府が問題を放置しているというより、国民の十分な合意が得られないからである。
選択的夫婦別姓について、個人の自由で選択の幅が広がる―などと歓迎するのは考え違いである。導入されれば夫婦同一姓を原則とした戸籍制度が崩れかねず、全国民に影響が及ぶ。親子が別々の姓になる事態も起きる。子供の姓を両親どちらの姓にするかなど、いさかいや混乱も予想される。
平成29年に行われた内閣府の世論調査では、夫婦別姓が子供に与える影響について、6割以上が「子供にとって好ましくない影響があると思う」と答えていた。
社会情勢の変化というなら、旧姓が通称使用できる企業は増えている。2年前には住民票やマイナンバーカードなどで旧姓を併記できるようにするため、政令改正が行われた。パスポート(旅券)についても旧姓併記の申請が容易になるよう緩和された。
日本の伝統や文化に根差した家族制度の原則を崩す必要はなく、さらに働きやすい職場づくりなどに知恵を絞る方が現実的だ。
国や社会の基盤である家族の意義に理解を深くしたい。
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2021年6月24日付産経新聞【主張】を転載しています