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日本は、中国の宇宙分野の軍拡を警戒し、抑止力を高めるべきだ。
中国の習近平国家主席は6月23日、同国が独自に建設中の宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士3人とテレビ会議システムで対話した。習氏は宇宙ステーション建設が「人類の宇宙の平和利用にとって先駆的な貢献となる」と語った。
言葉通りには信用しがたい。宇宙ステーションの関連技術が軍事利用されない保証はない。
中国は、米国に対抗できる「宇宙強国」を目指し、軍主導で宇宙開発を進めてきた。軍所属の3人の宇宙飛行士は「宇宙にいても偉大な共産党と祖国を誇りに思う」と習氏に述べた。3人はおよそ3カ月の滞在で、ロボットアームの操作や船外活動など宇宙での長期滞在技術を検証するという。
米欧諸国でつくる北大西洋条約機構(NATO)は6月14日の首脳会議声明で、NATO加盟国の人工衛星などへの攻撃は集団的自衛権行使の対象になり得ると表明した。4月の日米首脳会談の共同声明は宇宙を含む「全ての領域を横断する防衛協力」の深化を誓った。これらには、中国やロシアの宇宙軍拡に備える狙いがある。
中国は宇宙開発で、衛星利用測位システム(GPS)や偵察衛星からの情報を駆使する米軍の優位性を突き崩そうとしている。
2007年にはミサイルによる衛星破壊実験で中国は大量のデブリ(宇宙ゴミ)をばらまき、国際的に批判された。その後も破壊を伴わない対衛星ミサイル実験を続けている。衛星破壊用の「キラー衛星」やレーザーも開発中だ。
日本は、自国や同盟国米国の宇宙を利用した通信・監視システムが攻撃され、機能不全に陥らないよう備える必要がある。
政府は6月29日の宇宙開発戦略本部で、多数の小型人工衛星を低軌道に投入し、警戒監視、通信に用いる小型衛星コンステレーション(複数基を協調運用する衛星群)構築の技術研究に着手する方針を決めた。ミサイル防衛や災害対応、海洋状況監視などに活用できる。昨年5月には自衛隊に「宇宙作戦隊」を発足させ、同年6月の宇宙基本計画改定では政策目標の筆頭に「宇宙安全保障の確保」を掲げた。
いずれも国民を守る上で重要だ。米国とも協力し、宇宙における抑止力の向上を急ぎたい。
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2021年7月6日付産経新聞【主張】を転載しています