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「Japan Forward」読者の皆さん、こんにちは。
9月も半ばを過ぎ、日本では秋の気配が漂い始めました。
先月まで猛暑の中、行われていた東京オリンピックが遠い日のことのようです。今回はこの東京オリンピックと、そのあとに開催されたパラリンピックについて感じたことをお伝えしたいと思います。
まず最初に、昨年から続くコロナ禍の中、オリンピックとパラリンピック開催を実現してくださった世界中の関係者の皆さんにこの場を借りて心からお礼を申しあげます。国際オリンピック委員会、日本オリンピック委員会、大会組織委員会をはじめ、大会をサポートしてくださったボランティアの皆さん、オリンピック、パラリンピックムーブメントを支持し、応援してくださった皆さんのおかげです。
そして日夜、コロナウイルスと戦っている医療従事者、エッセンシャルワーカーの皆さまにも改めて感謝申し上げます。
東京オリンピックとパラリンピックはどちらも素晴らしい大会となりました。オリンピックには、205カ国・地域と難民選手団から約11,000人が参加し、33競技339種目が行われ、パラリンピックには61カ国・地域と難民選手団から約4400人が参加し、22競技539種目が行われました。
この困難の中、世界中から選手や関係者が集い、国、人種、政治、宗教を超えて、戦い、プレーしました。大会の共通テーマのひとつである「多様性と調和」がそれぞれの競技で体現されていました。選手たちの奮闘は、世界中のたくさんの人々に夢や希望、未来へ向けてのエネルギーを届けたことでしょう。
おかげさまで私が監督を務めた東京五輪柔道男子日本代表は、個人7階級のうち、5階級で金メダルを獲得することができました。ひとつの国が5個の金メダルを獲得するのは五輪の柔道史上、初めてとのことです。
リオ五輪から5年。開催延期という前代未聞の事態の中、選手、コーチ、スタッフが、冷静に準備を進め、やるべきことをやり、試合当日を迎えたことが、このような結果に表れたと言えます。監督として、このような素晴らしいチームを率いることができたことを誇りに思います。
一方、最終日に行われた男女混合団体戦で日本は、決勝でフランスに敗れて2位となりました。フランスは選手個々の能力が高いうえ、すばらしいチームワークによって栄冠に輝きました。彼ら、彼女たちは、柔道の魅力を世界中に示してくれたと思います。
男女混合団体戦は、今大会、初めてオリンピックで行われた種目です。我々日本は初代王者の座を狙っていましたから、2位に終わってしまったことはとても悔しい思いです。しかしながら、この結果は、日本生まれの柔道が世界中で親しまれていることの象徴です。ですから、フランスチームの優勝については、柔道の発展を思うとうれしい気持ちもあるというのが正直なところです。
さて、私は9月30日をもって、任期満了により柔道男子日本代表監督を退任することとなりました。約9年間にわたり、国内外からたくさんのご声援をいただきました。皆さまの温かいサポートに心より感謝申し上げます。
退任の日を前に私は、すでに次の目標へ向け、新しいスタートを切っています。
今回の東京オリンピックの経験を活かし、これからも柔道とスポーツを通じた社会貢献活動を続けてまいります。
筆者:井上康生