~~
18都道府県に適用されている新型コロナウイルス対策の蔓延(まんえん)防止等重点措置が21日までで全面解除され、東京都では飲食店への営業時間短縮や酒類提供制限の要請が撤廃される。花見や送別会シーズンを迎える中、長い間苦境にあった飲食店などは期待に胸を膨らませるが、独自の感染対策を継続するなど工夫も凝らす。
都内有数の桜の名所、上野公園(台東区)。休園中の上野動物園も23日から予約制で再開することが決まり、家族連れのにぎわいが戻ることが期待される。
もっとも、都は桜の下での酒類を伴う宴会やシートを広げての飲食などを自粛するよう求めている。公園内には自粛を呼び掛ける看板が立てられ、桜の木の周辺はシートを敷いたりできないようロープを張るなどの対策が施されている。
一方、飲食店にとっては、重点措置が解除された今回の花見シーズンは大きなチャンスとなる。
公園内の老舗洋食店「上野精養軒」では花見の時期、眺めのいいテラス席が人気を集める。総支配人の秋元秀夫さん(56)は「飲食店は過去2年間苦しい状況が続いた。来園者が増える時期での重点措置の解除は、明るいニュースだ」と喜んだ。
同店のフレンチ部門では都の要請に従い、酒類提供は午後8時までとし、同9時に閉店してきた。22日以降も閉店時間は変えないが、酒類提供を30分間延ばす。「お客さんには時間を気にせず飲んでもらえるようになる」(秋元さん)
公園近くの割烹「伊豆栄不忍(しのばず)亭」でも桜の季節に合わせた料理や弁当を用意し、客入りを心待ちにする。ただ、営業時間はコロナ禍前の午後10時までには戻さず、現状の午後9時から変えない予定だ。
店長の前川悟志さん(53)は「時短営業の期間が長く続き、お客さんの帰宅時間が早くなっている。遅い時間まで開けていてもあまり来ないだろう」と打ち明ける。
約4キロにわたって約800本の桜並木が続く目黒川沿いの飲食店なども重点措置の解除を歓迎する。
目黒川で花見クルーズを運航する「ジール」(港区)では座席の間隔を空けるため、定員を44人から28人に減らし、酒類の持ち込みは1人当たり缶ビール2本程度までに制限するなど感染対策を継続する。それでも予約は昨年同時期より1・5倍増えているという。
遊覧観光事業部の片山亮課長(38)は「(重点措置の解除が)桜の開花時期と同時であるのは明るい希望。水上から見上げる両岸に咲く桜並木は圧巻で、これまで控えていた団体客の方にも利用してほしい」と話した。
都は時短営業の要請などを撤廃する一方で、新規感染者数の下げ止まり傾向を考慮し、1テーブル4人、滞在時間2時間以内などの協力依頼を続ける。「焼鶏あきら 中目黒本店」の店長、大川誠太さん(32)は「強制力もなく、協力依頼がどこまで浸透するのか」と首をかしげる。
同店は窓越しに一面の八重桜を観賞することができ、4月中旬に見頃を迎える花見シーズンは予約客でいっぱいになる。今年も3月最終週は予約でほぼ埋まり、20人近い団体客も入っている。コロナの陰性証明を提示すれば人数制限も除外されるが、大川さんは「混雑する中で証明書を確認するのは現実的ではない。かといって予約も断れない」と話す。
飲食店は原油価格の高騰でも経営が圧迫され、ウクライナ情勢の影響でさらなる負担増加も懸念される。「コロナ禍で、都の要請はずっと変わらない。『自分たちの財布は自分で守る』という気持ちで、従業員の生活を守るべく頑張りたい」と力を込めた。
筆者:橘川玲奈、浅上あゆみ(産経新聞)