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ポーランドのミレフスキ駐日大使は13日までに産経新聞のインタビューに応じ、ロシアが侵攻するウクライナからの避難民への支援に関し、日本政府の経済援助に期待感を示した。また、北方領土問題を抱える日本が厳しい対露制裁に踏み切ったことについて「リスクを取っても制裁を講じた日本に非常に感謝している」と述べた。
ミレフスキ氏は、日本が人道支援で計2億ドル(252億円)の拠出を表明し、避難民を受け入れていることを挙げ、「日本は侵略者を非難し、具体的で重要な人道支援を行ってくれた」と評価した。
ポーランドはウクライナから260万人超の避難民を受け入れ、衣食住の費用を負担している。多くの避難民を受け入れていることについては、ポーランドが第二次世界大戦でナチスドイツとソ連に分割占領された経験があることを念頭に「軍による爆撃で家を離れなければならない事情が分かるからだ」と述べた。
同時に「ウクライナでの戦争と避難民流入でわれわれは高いインフレに直面している」と明かし、「日本政府からの経済援助が最も必要なことだ」と述べた。
日本からの医師などの派遣については「緊急に必要という状況ではない」と述べた。むしろ病院への爆撃などで不足する医療物資の提供が「避難民の支援になる」とした。
一方、「東欧だけでなく東アジアも安全保障の課題に直面している」と指摘。「ロシアがウクライナで残虐行為を続けるのを許せば、中国や北朝鮮のような国々がロシアに倣おうと思うのではないか」と懸念を示した。
また、国連安全保障理事会に関し「中国やロシアのような国に拒否権があると安保理は妥当な判断を下せなくなる」と批判し、日本の国連改革を支持する考えを明らかにした。
主なやり取りは次の通り。
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-ポーランドは260万人超のウクライナ避難民を受け入れてきた
「ロシアがウクライナを攻撃した2月24日以降、パスポートや(新型コロナウイルスの)ワクチン接種証明などの書類を持っていなくとも、入国できる措置を講じている。就業支援や医療、子供への教育を無償で提供している」
-避難民支援に注力する理由は
「わが国の国境線は、ナチス・ドイツだけでなくソ連のような帝国に占領され、何度も変わった。軍による爆撃を受け続けて家を離れるウクライナ人の気持ちがよく分かる」
-ポーランド国内の現状は
「ウクライナでの戦争と避難民流入で非常に高いインフレに直面している。この危機が続けばポーランド経済は多くの課題に直面するだろう。ポーランドは2004年から欧州連合(EU)に加盟し、助成金などの支援がある。それでも、全ての支出を賄いきれるわけではない。日本からの支援にとても感謝している」
-日本もウクライナ避難民への支援を行っている
「日本政府は人道支援として2億ドル(約252億円)を拠出することを決定している。岸田文雄首相の特使として林芳正外相ら政府代表団がポーランドを訪れ、避難民にどんな支援を用意できるか意見を交わすことができた。遠く離れたところから侵略者を非難し、具体的で重要な人道支援を行ってくれたことに非常に感謝している」
-ウクライナではロシア軍による民間人に対する残虐行為が起きている
「ロシアはテロリスト国家だ。プーチン(大統領)は戦争犯罪人だ。権力を辞すべきだ。(そうすべきだということに)ロシア社会が気付くべきだ」
-対露制裁の現状は
「日本は(北方)領土の問題があり、平和条約交渉が中断している状況だ。リスクを取ってでも対露制裁を講じてくれた日本の対応を本当にありがたく思う」
-現地で自衛隊の派遣など日本の人的支援に対するニーズはあるか
「(日本からの医師などの派遣は)緊急に必要という状況ではない。ワクチンや医療物資の提供の可能性を、日本政府が検討してくれることもいい考えだ。避難民への支援になる」
-東アジア情勢への影響は
「われわれは東欧だけでなく東アジアでも安全保障の課題に直面している。ロシアにウクライナで残虐行為を続けることを許してしまったら、北朝鮮や中国のような別の国々がロシアの例に倣(なら)おうと思うのではないかと懸念している」
-ウクライナのゼレンスキー大統領は国連で安全保障理事会の改革を訴えた
「ロシアや中国のような国に拒否権があると、安保理は極めて弱く消極的で、妥当な判断を下せなくなる。国連は改革へ進まなければならない。日本は国連改革に向けて重要な役割を果たすと確信している」
聞き手:岡田美月(産経新聞)
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【プロフィル】パヴェウ・ミレフスキ氏
1975年生まれ。96年から中国の首都師範大、アモイ大に留学。99年、アダム・ミツキェヴィッチ大で中国学修士号を取得し、ポーランド外務省入省。駐オーストラリア大使、アジア・太平洋局長などを歴任。2019年10月から現職。