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人口約2500万人の中国最大の経済都市、上海で、新型コロナウイルス感染症を封じ込めるために3月28日からロックダウン(都市封鎖)が続いている。
そのやり方があまりに拙劣なため、食料不足など生活苦に陥った住民からは助けを求める訴えや不満の声が出ている。
軟禁状態に近い暮らしを強いられている人々への食料や日用品の供給が追い付いていない。医療機関の閉鎖により、持病のある人が治療や投薬を受けられない事態も起きている。
中国の習近平政権が上海で行っているのは、住民の命にもかかわる非人道的な措置である。
人権を無視するゼロコロナ政策の破綻は明らかだ。あまりに強権的な都市封鎖は改めなくてはならない。
上海市の新規感染者数は連日2万人を超え、12日には過去最多を更新した。9割以上が無症状者とされる。上海市当局は感染拡大を徹底して抑え込むゼロコロナ政策で、無症状者や濃厚接触者まで施設で隔離している。
米政府は11日、緊急業務に関わらない上海総領事館の職員と家族に退避を命じた。感染者の増加と市当局の行動制限が理由だ。
日本政府の動きは鈍い。上海には日本企業1万社が進出し、約4万2千人の邦人がいる。駐在員からは食料やおむつなどの枯渇を訴える声が届いている。政府は邦人の健康と安全確保のために全力を尽くしているのか。
習政権がゼロコロナ政策をとるのは、「共産党による指導と社会主義制度の顕著な優越性」を内外に示すねらいがある。
中国のワクチン接種率は9割弱だが、国産の不活化ワクチンは効果が低いとされることも、日本や欧米諸国のような、社会・経済活動を止めない政策への転換を躊(ちゅう)躇(ちょ)させているようだ。
驚くのは、市内を視察した上海市の共産党トップ、李強・党委員会書記が住民に詰め寄られる動画がネットで拡散したことだ。
厳しい情報統制下で異常な事態だ。李氏は習氏側近で、今秋の党大会で最高指導部入りが取り沙汰される有力者だ。その李氏の動画の拡散は、中国国内で硬直したコロナ対応をとる習政権への不満が生じていることが影響していないか。共産党政権内部の権力闘争の行方にも警戒は怠れない。
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2022年4月14日付産経新聞【主張】を転載しています