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コロナ禍でオンライン授業が常態化し、学生の学力低下が懸念されるなか、ボタンを押して教師の問いかけに反応することで授業の理解度を高める「がってんボタン」を東京大学教授らが開発、実用化されることになった。アスキー創業者として知られる西和彦氏が理事長を務めるNPO法人「IoTメディアラボラトリー」とセンサー開発で知られる「システムジャパン」(七里芳輝代表取締役)、東大研究室の共同開発で、中尾政之・東大教授は「ズームを使ったオンライン授業では学生の理解度がなかなか伝わらない。このボタンを使えば、下を向いている学生も理解してくれていることが分かる。授業に関する関心度、やる気も上げてくれます」と話す。
「がってんボタン」はUSBケーブルでパソコンに接続するだけで簡単に装着できる。オンライン授業は、学生がまず「がってんボタン」の機体にIDカードを取り付けて出席を告知し、教師は自身のパソコンのモニターで学生の出欠を確認してスタート。教師が学生に「分かりましたか」と問いかけると、理解できた学生は「がってん!」とばかりにこのボタンを叩く。すると教師側のモニターに〝がってんサイン〟が点灯、学生がボタンを押す速度もモニターに記録される。
「がってんボタン」の内部には、近距離なら接触しなくても呼吸や脈波などを計測できる非接触型バイタルセンサーが設置されており、学生がボタンの前から離れると出席サインが消滅。このセンサーにより、教師は学生の理解度だけでなく、〝出席〟のチエックもできる。非接触バイタルセンサーはシステムジャパンが開発し、介護などの分野ですでに商品化されている。
「がってんボタン」は東大研究室が、オンライン授業で学生の理解度を深めるには何らかのアクションを起こさせることが効果的との実証を得て、システムジャパンと共同開発契約を結んだことで誕生。西理事長は「学生たちの〝抜け授業〟を防ぐことができるうえ、ボタンを押す動作で集中力を高めることができる」と語る。
「がってんボタン」の効果について、西理事長が学園長を務める須磨学園中学校・高校(神戸市須磨区)で、令和2年と3年に試作品による実験を実施。西理事長は「ボタンを使った学生と、使っていない学生に同じ試験を行ったところ、使った学生が20%も点数が良かった。まさに〝魔法のボタン〟です」としている。
リアルな授業でも効果が期待できそうな「がってんボタン」。須磨学園では新学期から100台を導入する予定という。学生の授業に対する意欲を向上させ、学力低下に歯止めをかけることができるか。