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中国でのイベントの前夜祭に出席した関経連の松本正義会長(中央)ら訪中団メンバー=11月25日、北京(井上浩平撮影)

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関西財界の代表団が11月下旬、中国・北京を訪問し、中国共産党の要人らと面会して関西と中国の経済交流促進をテーマに協議を行った。2012年以来、12年ぶり8回目の訪中団は、両者が極めて近接していることを表す言葉「一衣帯水(いちいたいすい)」を現地で何度も繰り返して緊密な関係を強調。中国側から厚遇を受けたが、米国のトランプ次期大統領就任で米中対立の激化が想定される中、日本を取り込みたい中国の打算も透けてみえた。

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李強首相と極秘に面談

「乾杯」「乾杯」。訪中団が主要日程を終えた11月27日夜、北京市内の中華料理店に、訪中団の共同代表を務めた関西経済連合会の松本正義会長の上機嫌な声が何度も響いた。

訪中団は関経連と大阪商工会議所、関西経済同友会など7団体で構成し、規模は前回を上回る85人。11月25~27日、中国の政府系経済団体である中国国際貿易促進委員会(国貿促)の手引きで、要人たちと面会を次々と果たした。

25日には中国人民対外友好協会を訪ね、9月に広東省深圳市で発生した日本人男児刺殺事件を踏まえ、駐在員と家族の安全確保を要望した。この間、松本氏は中国側の指示で隠密行動を取り、欧米のグローバル企業の経営者らとともに李強首相と面談。日中の発展に向けた経済的協力関係の構築を訴えたという。

全国人民代表大会に臨む習近平国家主席(左)と李強首相=3月5日(共同)

中国の景気減速が顕著となり、米中貿易摩擦の激化が予測される中、訪中団の北京入り直前の22日、中国は日本に対する短期滞在のビザ免除措置再開を発表。滞在可能期間を30日以内に延長し、日本からの投資拡大への期待をうかがわせた。

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「中国は安全な国」

一方で、訪中団が北京滞在中に、トランプ氏が中国からの輸入品に追加関税を課す考えを表明。同じタイミングで北京で開幕した中国国際サプライチェーン(供給網)促進博覧会には訪中団も招かれ、親中派の欧米の経済団体トップが祝辞を述べた。訪中団共同代表の大商の鳥井信吾会頭は、中国を軸にした供給網構築について「中国政府の強い意気込みを感じた」と語った。

訪中団のクライマックスは27日、中国の国会議事堂にあたる人民大会堂での何立峰副首相との面会だった。松本氏は「関西経済の発展には中国とのさらなる関係強化が重要」と主張。何氏は懸案の邦人の安全確保についても「中国は世界でも安全な国。違反事案が発生すればいち早く対応し、安全を高めるので安心してほしい」と述べ、「課題を乗り越えウィンウィンの発展を遂げることが大切」と語ったという。

関西の財界関係者によると、今回の訪中団派遣は今年2月、大阪・関西万博関連で来阪した国貿促の幹部が財界トップらに派遣を求めたことが始まりだった。中国の外交スケジュールの情報から、習近平国家主席に訪中団のメッセージが届く可能性がある側近との対面に狙いを定め、今回の日程に落ち着いた。

松本氏は現地での記者会見で、中国について「日本との経済関係強化や、中国での外国企業の活発な活動に期待し、外国企業の声に耳を傾ける姿勢が感じ取れた」と評価。中国の事業環境や経済の低成長などに課題があるとしながらも、「中国経済のダイナミズムを考えると、協業の道を探り、進めることがわが国にとって重要な戦略となる」と総括した。

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突出する関西の中国依存

中国の経済的威圧や安全保障への懸念から、中国に依存することの危険性が鮮明になっている。日本国内の多くの企業が「チャイナリスク」への警戒から依存度を低下させているが、関西は脱中国が進んでいない。

りそな総合研究所によると、日本から海外に進出する企業は2018年の約2万6千社をピークに緩やかに減少。進出先別では、欧米はほぼ横ばいで東南アジア諸国連合(ASEN)などは増加が顕著だが、中国は減少が目立っている。中国減少の要因として、中国国内の人件費の上昇により「世界の生産基地」としての強みが低下したことが挙げられる。

りそな総研のチャイナリスクの指標は、主に企業の売上高全体に占める中国関連取引額の割合で推計する。21年の指標では、三大都市圏で関西は18・1%で最大。東海は14・9%、首都圏など南関東は10・0%だった。

関西企業の中国撤退が遅れている理由として非製造業の依存が挙げられる。「世界の工場」としての魅力は低下しても、消費地としての価値を認めているからだ。

りそな総研の荒木秀之主席研究員は「他地域の企業が撤退する中、関西企業が取り残される形となっている」と指摘。台湾有事への懸念も示し、「チャイナリスクへの対応に時間の猶予がなくなりつつある。地域全体で課題を共有し、リスク軽減に向けて戦略的に取り組む必要がある」とした。

筆者:井上浩平(産経新聞)

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