日本は中国の影響力拡大とインド太平洋地域の小国の間に立つ「防波堤」となり、地域の安全保障を担うリーダーとしての役割を自ら引き受ける姿勢を明確にしている。
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会談を前に握手する小泉防衛相(右)とトンガのウルカララ皇太子=2月23日、東京都内のホテル(代表撮影)

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中国がインド太平洋地域で拡張的な姿勢を強めるなか、日本は中国の影響力拡大と地域の小国の間に立つ「防波堤」となる意思を明確にしている。2月23日、日本の防衛大臣である小泉進次郎氏は、日本・太平洋島嶼国防衛大臣会合(JPIDD)において、この方針を表明した。会合には太平洋島嶼国14か国の防衛関係者が参加した。

これは単なる外交的レトリックではない。戦略的な意思表示である。米国は2025年国家安全保障戦略(NSS)と2026年国家防衛戦略(NDS)で西太平洋への関与を確認する一方、各国の自助的な安全保障責任を強調している。こうした状況の下、日本は地域の安全保障を担うリーダーとしての役割を自ら引き受ける姿勢を示している。

この変化は単なる政策調整ではない。アジアの地政学における大きな潮流の変化を示している。すなわち、ルールに基づく国際秩序の揺らぎ、中国主導の強圧的なパワー政治の台頭、そして地域の安全保障安定装置としての日本の台頭である。

日本は、インド太平洋地域で進む軍事化と戦略的包囲を黙って見過ごすことはないとの姿勢を明確にしている。この動きは地域諸国からも概ね好意的に受け止められている。世論調査によれば、東南アジア諸国は日本を信頼できるパートナー、そして地域で最も信頼される主要国とみなしている。平和憲法の下で長く軍事的制約を受けてきた国にとって、これは大きな変化である。

しかし一方で、東南アジア諸国は中国を最も重要な経済パートナーと認識しているという現実もある。南シナ海での海洋進出、強圧的外交、領有権主張など中国の行動は信頼を大きく損ねている。つまり地域は、中国に経済的には依存しつつも、安全保障面では警戒しているという矛盾した状況に置かれている。

中国は南シナ海でグレーゾーン作戦を展開し、広範な領有権を主張する海軍演習を行い、争いのある海域の軍事化を進めてきた。これに対し日本は挑発ではなく、慎重な戦略調整によって対応している。海上演習の拡大、自衛隊艦艇の寄港増加、東南アジア諸国との防衛協力の深化などがその具体例である。

その変化は数字にも表れている。日本の東南アジアへの防衛関与は、2017年には地域ランキング15位だったが、2025年には4位に上昇した。フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、カンボジアとの協力は特に強化されている。

2014年以降、日本は海洋東南アジア諸国との軍事演習を着実に拡大してきた。海上自衛隊の寄港も、象徴的なものから、日常的な活動へと変化している。

日ASEAN首脳会議で写真撮影に臨む高市早苗首相(中央)ら=2025年10月、クアラルンプール(©首相官邸)

さらに重要なのは、日本が2022年に「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を創設したことである。中国の不透明な安全保障取引とは異なり、OSAは沿岸レーダー、ゴムボート、航空監視装備などの非致死性防衛支援を透明な形で提供する。特にフィリピンのような最前線国家の海洋監視能力を高める狙いがある。これは政治的な同盟や債務依存を強いるものではない。言い換えれば、日本の安全保障協力は強制ではなく支援を基盤とするという特徴を持つ。

一方で、国際秩序全体でも大きな変化が進んでいる。東シナ海・南シナ海における中国の急速な軍備拡張、さらにロシア・ウクライナ戦争は重要な教訓を示した。安全保障は他国に完全に依存できるものではないという現実である。

米国が同盟国により大きな自助努力を求めていることも、日本にとっては不確実性と責任の双方を意味する。米国の拡大抑止に長く依存してきた日本にとって、今後は同盟依存と戦略的自立を両立させる必要がある。

さらに北朝鮮のミサイル開発、ロシアとの接近、中国とロシアの連携強化も、日本の安全保障環境を一層厳しくしている。権威主義国家の連携が強まるなか、日本は軍事体制の近代化を急ぐ必要に迫られている。

中国の王毅共産党政治局員兼外相(ロイター)

中国はまた、日本企業への輸出規制という形で経済的圧力を強めている。中国政府は、日本の軍事能力強化に関与したとする企業20社をブラックリストに掲載した。三菱造船や三菱重工関連企業、IHIグループ、さらに防衛大学校や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが含まれる。これらの企業への軍民両用物資の輸出は禁止され、必要な場合は特別許可が求められる。

さらに、中国は別途「監視リスト」も公表した。そこにはスバルや日野自動車、日東電工、八島電機、ENEOS、東京科学大学など、日本企業や研究機関20団体が含まれている。中国政府はこれらの措置について、日本の「再軍備化と核武装の野心」に対処するためであり、「正当で合理的、かつ合法的な措置」であると説明している。

しかし実際には、こうした経済圧力は中国が他国に対して繰り返してきた典型的な手法である。貿易を武器として政治的圧力をかけるやり方は、オーストラリア、リトアニア、韓国、フィリピンなどへの対応とも共通している。経済的相互依存は交渉力となり、やがて威圧の手段へと変わるのである。

北京市内の博物館で展示されているレアアース(希土類)が含まれた鉱物(共同)

一方、米国政府は中国が核戦力を急速に拡張していると指摘している。他国には自制を求めながら、自国の軍事力拡大を進める中国の姿勢は、「平和的台頭」という主張の信頼性を損なっている。

これに対し日本は、感情的でも無謀でもない対応を取っている。東南アジア諸国に加え、英国、イタリア、オーストラリア、ニュージーランド、インド、欧州連合との防衛協力を強化している。その論理は明確であり、抑止力はネットワーク化されなければならないからである。

日本の防衛関係者たちの間では、「ウクライナは今日の問題だが、東アジアは明日の問題かもしれない」という言葉が広く共有されている。

中国が日本のパートナーシップ拡大に強い不快感を示すのも無理はない。民主主義国家が連携すれば、中国の一方的な影響力拡大の余地は狭まるからである。中国は、日本が存在する限り、東アジアにおける覇権的野心が完全には達成できないことを理解している。

輸出規制やブラックリストによる威圧は、日本にとってむしろ経済の多角化と強靱化の必要性を示すものとなっている。経済的威圧は自信の表れではなく、むしろ戦略的不安の裏返しとも言える。

南シナ海で4か国共同訓練を行う日本、アメリカ、カナダ、フィリピンの艦船=2024年6月(海上自衛隊提供)

新しい地域秩序は、もはや経済力だけで決まるものではない。信頼、責任、そして節度こそが重要な要素となっている。中国は依然として経済的には不可欠な存在である。しかし安全保障の面では、日本こそが地域にとって不可欠な存在になりつつある。

インド太平洋地域が強圧による勢力圏支配へと滑り落ちるのを防ぐためには、日本の役割は象徴的なものではなく、構造的な柱となるだろう。

筆者:ペマ・ギャルポ(政治学者)

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