外国人労働者のニーズが高まる一方、日本語能力が障壁となり社会保障関連の書類作成や申請の手続きで挫折するケースが増えている。外国人に安心して働いてもらうため、独自のサポートに乗り出す企業もある。
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外国人派遣スタッフの問い合わせに対応する窓口の社員(スタッフサービス・ホールディングス提供)

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深刻な人手不足を背景に外国人労働者のニーズが高まる一方、日本語能力が障壁となり社会保障関連の書類作成や申請の手続きで挫折するケースが増えている。年末調整に確定申告、医療費控除―。難解な日本語での説明は特に分かりにくく、「だまされているのでは」と不安を抱く人もいる。外国人に安心して働いてもらうため、独自のサポートに乗り出す企業もある。

「日本で就業する際に書類をもらったが、内容が分からなかった。安易にサインするのも不安だし、困った」。大阪市内の製造関係の企業で3年前から派遣社員として働くブラジル国籍の男性(25)は当時をこう振り返る。

日本語はまったく話せず、配布された書類には難解な言葉が並ぶ。読解して記入するには高いハードルを感じた。「書類の理解が十分でないままサインすれば、不利益な契約を結ぶことになるかもしれない。AI(人工知能)翻訳機を活用しても完璧ではなく不安は大きかった」(男性)。その後、書類の提出を促すはがきが届いたが、これも日本語で書かれており内容は理解できなかった。

日本でIT企業を立ち上げることを目指し来日した男性。日本は他国と比べてテクノロジーが進歩し、給料も高く思えたことが背景にある。こうしたメリットの半面、提出書類一つにしても内容が分からず、壁にぶちあたり続けた。「日本で働くために日本語の勉強は必要だとは思う」と男性。一方、「英語に翻訳された資料があれば、もう少し楽になるのに」とこぼす。

厚生労働省

厚生労働省の令和6年外国人雇用実態調査によると、外国人労働者の日本語能力は「日常的なことなら短い会話に参加できる」が最多の24・6%。「幅広い話題について自由に会話できる」(17・6%)、「身近な話題についての会話はできる」(13・9%)が続いた。「会話はほとんどできない」は1・8%だった。しかし公的機関への提出書類には、日常会話では使わない単語も並ぶため、困惑する外国人は少なくない。

調査では外国人労働者が就労する上で困ったこととして「トラブルをどこに相談すればよいか分からなかった」「事前の説明以上に高い日本語能力を求められた」といった回答も目立った。

こうした問題を背景に、外国人労働者の就労を支援する取り組みも広がる。

製造業を中心に人材派遣を行う「テクノ・サービス」(東京)では、外国籍の就労スタッフからの相談を受け付ける専門部署を令和元年8月に立ち上げた。日本語にたけ、社会保障にも詳しい外国人の社員約15人が在籍。英語や母国語を使って、就労前から就業後に至るまでの相談を幅広く受け付けている。対応件数は延べ約3万件を超え、1日約200~300件の電話に対応しているという。

寄せられる相談内容は主に、社会保険などに必要な手続き書類の作成など。日本人でも手続きにつまずきやすい年末調整や確定申告といった書類の提出時期には相談が殺到し、受付時間を拡大して相談に乗る。

同社の担当者は「いざというときの対応に不安を抱き、外国人雇用に踏み出せない企業もある。サポート部署があることは、派遣先の企業が外国人を雇用するハードルを下げることにもつながる」と語った。

筆者:堀口明里(産経新聞)

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