人工知能戦略本部会議で発言する高市早苗首相(左)=12月19日午前、首相官邸(春名中撮影)
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人工知能(AI)の活用と開発を進めるための基本計画を政府が閣議決定した。
AIは社会や経済、産業などあらゆる分野に変革をもたらす。その利用は国の発展と競争力に直結するが、日本は世界各国に大きく後れを取っている。
基本計画は「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」という野心的な目標を掲げた。高市早苗首相は関連施策に1兆円を投資すると表明したが、米中などを追い上げるのは容易ではない。官民挙げて戦略を具体化させる必要がある。

計画では国家主権や安全保障の観点も踏まえ、日本独自のAIを開発する。日本が強みを持つロボットなどで需要を創出し、経済成長につなげる。効率化や生産性の向上によって社会構造を変革し、人手不足や働き方、地方活性化などの課題解決にAIを生かす。いずれも実現すれば意義は大きい。
だが、最も重要なのは信頼性の確保だ。AIは間違った回答をしたり、犯罪に悪用されたりするリスクがある。日本が培ってきた高い品質や安全性を損なってはならない。政府が「信頼できるAI」を目指すとしたのは当然だ。その実効性を担保する施策がより求められる。
近年は「ディープフェイク」と呼ばれる虚偽の画像による人権侵害や情報操作、サイバー攻撃などAIのリスクが顕在化している。このため、AIの安全性を調査する機関の人員を拡充するという。責任をもって対策に取り組み、国民が安心して使えるようにしてもらいたい。

政府はAIを「まず使ってみる」という意識が重要だとしたが、リスクを理解したうえで正しく使うことが重要だ。普及を急ぐあまり安全が軽視されないようにしてほしい。依存を防ぐ対策や教育も必要だろう。
政府職員がAIを率先して使用し、自治体にも導入を促していくという。情報収集や事務効率化では効果を期待できるが、政策立案にも活用するのであれば、より慎重な運用が求められよう。意思決定は人間が行うことが肝要だ。
科学研究にAIを活用する方針も盛り込まれた。新薬などの効率的な開発に役立つ半面、AIだけに頼れば科学者の存在価値が失われかねない。自ら思考してじっくり研究する環境も確保すべきである。
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2025年12月28日付産経新聞【主張】を転載しています
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