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日銀が慎重ながらも着実に、緩和的な金融政策の修正を進めている。1月24日の金融政策決定会合で政策金利を0・25%程度から0・5%程度に引き上げる追加利上げを決めた。
異次元緩和策を転換した昨春以降、3度目の利上げだ。金利水準は約17年ぶりの高さである。
今春闘で賃上げの継続が見込めるとみたほか、トランプ米政権発足後の国際金融市場にも大きな混乱がなく、昨年12月の決定会合で見送った利上げに踏み切るのが適切と判断した。
暮らしや企業活動に幅広く影響する利上げを急ぎすぎれば景気を冷やしかねない。その点を見極めつつ金融政策を変更した今回の判断は妥当だろう。
日銀は今後、さらなる追加利上げを検討する。日本経済は長期低迷から脱却できるかどうかの岐路にある。その流れに水を差さないよう、きめ細かく丁寧な政策運営に努めてほしい。
利上げの背景には物価の上振れリスクもある。日銀は令和7年度の消費者物価上昇率見通しを1・9%から2・4%に変更するなど、昨年10月時点よりも物価予想を上方修正した。円安に伴う輸入価格上昇やコメの値上がりなどがあるためだ。
中小・零細企業への賃上げの広がりが想定通りに進まず、物価高に負けない賃金上昇を果たせなければ、個人消費は一段と停滞するだろう。日銀は細心の注意を払うべきである。
トランプ政権の政策も見極めなくてはならない。トランプ大統領が目指す高関税政策や減税はインフレ加速につながる恐れがある。個々の政策が具体化する中で米国内外の金利や為替なども大きく変動しかねない。
日銀に問われるのは、今回の利上げの効果を詳細に検証すると同時に、今後の内外の経済・金融環境の変化に機敏に対応できるかどうかである。
市場では次の利上げ時期が関心事だ。政策金利を0・75%まで上げれば約30年ぶりの水準となる。日本では久しくなかった局面であり、政策変更にはより慎重な判断が求められる。
日銀は今回、決定会合に先立って植田和男総裁らが追加利上げに踏み切る可能性を示唆してきた。その結果、市場に利上げが織り込まれ、予期せぬ混乱は生じなかった。日銀には引き続き、市場との丁寧な対話に尽力してもらいたい。
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2025年1月26日付産経新聞【主張】を転載しています
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