モーター大手ニデックで起きた不適切会計処理問題。第三者委員会が調査結果をまとめた調査報告書を公表した。ニデック問題について複数回に分けて追っていく。
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記者会見の冒頭で頭を下げるニデックの岸田光哉社長(中央)ら経営幹部=3月3日午後、東京都千代田区(酒井真大撮影)

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ニデック株式会社は、不適切な会計処理に関する問題を受け、日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠した第三者委員会を設置し、3月3日、その調査結果をまとめた調査報告書を公表した。調査は2025年9月から開始され、資料精査、319名へのヒアリング、フォレンジック調査、アンケート及び特設ホットライン等、多面的手法により実施されている。なお、第三者委員会による調査は継続しており、後日、最終的な影響額の算定の結果等の報告がなされる予定である。

認定された会計不正の内容

第三者委員会は、ニデックグループの多岐にわたる拠点において、以下のような会計不正が確認されたと認定した。不正の態様は単一ではなく、複数の会計領域に及んでいる点が特徴である。

第一に、棚卸資産および固定資産に関する不正である。将来の使用見込みや販売見込みが極めて低い原材料・製品について資産性があるかのように装い、評価損を計上しなかった事案や、実現確度の低い売上計画を前提に減損テストを行い、減損計上を回避した事案が複数確認された。また、本来費用処理すべき人件費等を固定資産に計上し、減価償却を通じて費用計上を先送りする手法も用いられていた。

京都市南区のニデック本社

第二に、引当金・負債に関する不正である。子会社単体では計上されていた政府補助金返還等に係る引当金を、連結決算において不正に戻し入れた事案や、不良債権に対する貸倒引当金を適切に計上しなかった事案が認定されている。

第三に、収益認識に関する不正である。本来収益計上が許されない性質の政府補助金について、その性質を偽って収益として計上した事案や、実態を伴わない取引を装って収益を計上した事案が確認された。

これら不正および誤謬の累積的影響として、2025年度第1四半期末時点の連結財務諸表における純資産への負の影響額は、約1,397億円に上ると暫定的に算定されている。また、ニデックのリリースによれば、過年度決算の訂正に際しては、第三者委員会の調査結果に基づく影響額に加えて、のれん及び固定資産の減損損失の追加計上が必要となる可能性があるとのことである。現時点では第三者委員会の調査が完了しておらず、その金額及び計上時期を決定することは困難であるが、現存の検討対象となるのれん及び固定資産の金額は、主に車載事業に関連して、約2,500億円規模になることが見込まれているとされている。

不正を生んだ直接的背景―過度な業績プレッシャー

第三者委員会は、不正が発生・継続した根本原因として、業績目標、特に営業利益目標の達成に向けた「過度なプレッシャー」の存在を指摘した。ニデックでは長年、「赤字は悪」との価値観の下、創業者によるトップダウンで非現実的な業績目標が設定され、必達のものとして現場に強く求められてきた。

ニデックの不正会計問題を巡り、記者会見する調査した第三者委員会の平尾覚委員長(中央)ら=3月3日午後、東京都千代田区(酒井真大撮影)

このプレッシャーは、本社の執行役員やCFOを通じて事業部門・子会社に波及し、決算期末後であっても数値を「積み上げる」ことが求められる状況が常態化していた。その結果、損失処理の先送りや会計処理の歪曲によって目標達成を図る行動が誘発されたとされる。

ニデック創業者の永守重信氏

「負の遺産」と不正の固定化

また、資産性に疑義のある資産が「負の遺産」として長期間滞留し、その処理が業績目標との関係で先送りされてきた実態も詳細に認定された。過去には資産健全化プロジェクトや構造改革が実施されたものの、いずれも業績目標を前提とした限定的な対応にとどまり、抜本的解消には至らなかったとされる。その結果、本来処理されるべき不良資産が温存され、後年の会計不正の温床となったと分析されている。

経営トップの関与とガバナンス

経営トップの関与について、報告書は、創業者が個々の会計不正を直接指示・主導した事実は認められなかったとする一方、本来直ちに是正すべき会計不正を計画的に処理する例を把握し、これを容認していたと評価した。また、過度な業績プレッシャーの起点が創業者にあったことを踏まえ、「最も責めを負うべき」と明確に結論付けている。他方、現経営トップについては、不正を指示・黙認した事実は認められないと整理された。

内部統制・ガバナンス面では、経理部門、内部監査部門、監査等委員会、社外役員のいずれもが、過度な業績プレッシャーという根本原因に十分切り込めず、牽制機能が実質的に機能していなかった点が厳しく指摘された。

ニデックの第三者委員会報告書はこちら:260303-01jp.pdf

著者:藤井雅樹、山内大将、百田博太郎(弁護士)

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