President Hiroshi Kobe of Nidec reveals the signboard with the new company name "Nidec" on April 1, Kyoto. (© Kyodo)
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前回の記事では、ニデックにおける不適切会計の概要や監査法人による意見不表明、ニデック株が特別注意銘柄に指定されたことなどについて紹介した。本稿では、これらの意味やニデックにもたらしうる影響について解説する。
監査法人の「意見不表明」とは
ニデックの会計監査人であるPwC Japan有限責任監査法人(以下「PwC」)は、2025年9月26日、ニデックの2025年3月期の有価証券報告書に対し、「意見不表明」の監査報告書を提出した。また、PwCは、同年11月14日、ニデックの半期報告書に対し、「結論の不表明」の期中レビュー報告書を提出した。
監査報告書における監査意見には、以下の4種類がある。
- 無限定適正意見
財務諸表が全ての重要な点において適正であると認める意見 - 限定付適正意見
一部不適切であるが、財務諸表全体が虚偽の表示に当たるほどではないという意見 - 不適正意見
財務諸表全体として重大な虚偽の表示があると認める意見 - 意見不表明
重要な監査手続を実施できなかったことにより、財務諸表全体に対する意見表明のための基礎を得ることができなかった場合に意見を表明しないこと
期中レビュー報告書における結論にも同様に、「無限定の結論」、「限定付結論」、「否定的結論」及び「結論の不表明」の4種類あり、「無限定の結論」は「無限定適正意見」、「限定付結論」は「限定付適正意見」、「否定的結論」は「不適正意見」、「結論の不表明」は「意見の不表明」に対応している。
日本公認会計士協会(JICPA)の解説によれば、「意見不表明」は財務諸表に対する意見表明ができないほど会計記録が不十分、又は監査証拠の入手が困難な場合に限られるとされている。つまり、監査人として「適正である」とも「適正でない」とも言えない、判断の基礎がそもそも得られない場合に初めて取られる対応である。
「意見不表明」の監査報告書等を受領した場合の影響
上場企業が、「意見不表明」又は「結論の不表明」の監査報告書又は期中レビュー報告書を受領したということは、単に監査法人が適正不適正の意見を表明できないということに留まらず、上場廃止基準に抵触し、上場廃止となるおそれがあるということを意味する。
すなわち、上場企業が、「意見不表明」又は「結論の不表明」の監査報告書又は期中レビュー報告書を受領した場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると東証が認めるときは上場廃止となる。

また、「意見不表明」がなされた場合で、かつ、当該上場会社の内部管理体制等について改善の必要性が高いと認めるときは、東証は、当該上場会社の株式を特別注意銘柄に指定することができる。まさに、ニデック株式は、2025年10月28日、監査報告書等において意見不表明等が記載され、内部管理体制等について改善の必要性が高いと認められるとして、「特別注意銘柄」に指定された。
特別注意銘柄とは
特別注意銘柄へ指定された上場会社は、当該指定から1年経過後速やかに、内部管理体制の状況等について記載した「内部管理体制確認書」を提出することが義務づけられる。
東証は、提出された内部管理体制確認書の内容等に基づき審査を行い、以下のとおり取り扱うこととされている。
- 指定解除
内部管理体制等が適切に整備され、適切に運用されている場合 - 指定継続
内部管理体制等が適切に整備されているが、適切に運用されていない場合(適切に運用される見込みがある場合に限る) - 上場廃止
内部管理体制等が適切に整備されていない場合又は適切に運用される見込みがない場合
特別注意銘柄の指定が継続された場合は、当該指定の継続を決定した日の属する事業年度(当該指定の継続を決定した日から当該事業年度の末日までの期間が3か月に満たない場合は当該事業年度の翌事業年度)の末日から起算して3か月以内に、内部管理体制確認書を再提出することが義務付けられ、審査の結果、再度内部管理体制等が適切に整備され、運用されていると認められない場合は、上場廃止となる。
上場廃止の可能性?
上記のとおり、ニデックは、「意見不表明」、「結論の不表明」がされたという上場廃止のリスクと、特別注意銘柄への指定という上場廃止リスクの2つの上場廃止リスクを抱えていることになる。
特に特別注意銘柄への指定については、原則1年間という期間制限があるところ、ニデックの不適切会計処理疑惑については、特別注意銘柄への指定から2ヶ月以上経過した2026年1月上旬現在、第三者委員会の調査報告書は提出されておらず、未だその具体的内容は不明なままである。
不適切会計処理疑惑の事実関係を明らかにし、その原因を判明しない限り、内部管理体制等を適切に整備することはできないため、第三者委員会の調査報告書の発表に時間がかかればかかるほど、上場廃止を回避することが困難となる。
仮に上場廃止となれば、株式は原則として市場で売買できなくなるため、株主は甚大な損害を被ることになる。
次回は、日本における過去の有価証券報告書等の虚偽記載の事案を紹介する。
著者:藤井雅樹、山内大将、百田博太郎(弁護士)
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