組織的詐欺に関する国際会議で、あいさつする警察庁の楠芳伸長官
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もはや地下経済という被害規模ではない。打てる手は全て打たねばいけない状況だ。
特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の令和7年被害額が過去最悪の3241億円だったと警察庁集計(暫定値)で判明した。
前年から1・6倍に増えてしまった。被害総件数は4万2900件(前年比37%増)で、特殊詐欺2万7758件(31%増)、SNS型投資・ロマンス詐欺1万5142件(47%増)だ。被害額の急伸要因は特殊詐欺で、約1414億円と前年からほぼ倍増した。
押し上げたのは警察官を騙(かた)る手口だ。特殊詐欺の被害額の約7割を占めた。インターネットバンキングなどが悪用され、被害が高額化した要因もある。

被害者の中にはやりとりで詐欺を疑った人も少なくないが、「逮捕される」との言動に恐怖を抱き、捜査協力の意図でお金を振り込むなどしたという。弱みに付け込んだ犯罪だ。
警察は絶対にSNSで聴取することはなく、お金を求めることもない。警察はそのことをもっと周知し、怪しい接触ややりとりがあった場合は通話を断って通報できる受け皿をつくって国民に知らせるべきだ。
詐欺の犯行次元が変化している。犯人グループは監視が緩い東南アジアに拠点を転々と築き、「高収入」で騙(だま)した日本人をかけ子などにして詐欺を繰り返す。日本国内で検挙できる対象は多くなくなっている。海外に組織がある以上、日本警察だけで事態を改善するのは難しい。国際協力が重要だ。

昨年はタイ、カンボジア、マレーシアなど4カ国で拠点を摘発し54人を逮捕したが、現地警察の協力が不可欠だった。一昨年のミャンマー詐欺団地のように、国際的な圧力が摘発を実現した例もある。日本警察は東南アジア諸国や中国と協力関係を深化させる必要がある。
犯罪収益を追跡し、引き出しを封じられる態勢も国際的に構築しなければいけない。
AIの深化で詐欺の一層の巧妙化も予測される。AIにはAIでの対抗が必要で、詐欺を見抜き被害を防ぐホワイトAIの開発と普及が待たれる。海外では組織解明捜査のため合法ウイルスの使用を警察に認めている。日本も導入すべきではないか。やれることは全てやる。詐欺被害はそこまで深刻だ。
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2026年2月16日付産経新聞【主張】を転載しています
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