政府は、認知症施策の指針となる「基本計画」を閣議決定した。社会参加の機会の確保や、意思決定の支援など推進すべき12の施策を挙げた。
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政府は、今後の認知症施策の指針となる「基本計画」を閣議決定した。

「誰もが認知症になり得る」として、認知症の人の意思の尊重を掲げ、社会参加の機会の確保や、意思決定の支援など推進すべき12の施策を挙げた。

これからが正念場だ。理念を掲げても、実現の方策が不十分なら絵に描いた餅でしかない。理念を体現したサービスや地域社会を作っていくことに全力を挙げてほしい。

奈良県大和郡山市で行われた認知症高齢者見守り模擬訓練で、道に迷った高齢男性役の施設職員(左端)に声をかける地域住民ら=2023年11月16日(産経新聞)

認知症は人によって症状に違いがあるが、何よりも重要なのは、本人の意向をしっかりくみ取る努力をすることである。本人の意向と家族の希望が異なることもある。各自治体の担当者らは親身になって認知症の人と対話しなければいけない。

都道府県や市町村は、基本計画を基に推進計画を作成することが求められている。認知症の人が抱える課題や不都合を把握し、地元の介護事業者やNPO法人、企業、ボランティアグループなどと協力して真剣に解決策を考えてもらいたい。

地域によって進捗(しんちょく)に差が出る可能性がある。厚生労働省は、認知症の人が全国のどこに住んでいても、住み慣れた土地で周囲とつながり、希望を持って暮らしていけるよう、自治体を支援しなければならない。

認知症と、その予備軍とされる軽度認知障害(MCI)の高齢者は、令和4年の約1千万人から22年には約1200万人に増えて、高齢者の3・3人に1人を占める見通しだ。

介護保険などの公的サービスだけでは到底行き届くまい。認知症の人と家族が不安なく暮らせる街づくりが急務である。

一部の自治体では、認知症の当事者が体験や要望を語り合う「本人ミーティング」が始まっている。意思を表明する後押しになるだろう。

当事者の声を生かし、居場所や社会参加の機会を作っていくことが重要だ。介護事業者の中には、本人の希望を聞き、地元飲食店で野菜の下ごしらえを手伝ったり、保育所などで読み聞かせをしたりする機会を作っているところもある。やりがいや達成感につながるはずだ。

取り組みの裾野を広げ、認知症の人が当たり前に参加できる多様な場を作ることで周囲の人にも理解が進む。誰にとっても住みやすい街になるだろう。+

2024年12月15日付産経新聞【主張】を転載しています

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