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日本の調査捕鯨への妨害活動を指示したとして、海上保安庁が国際手配していた反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」創設者、ポール・ワトソン容疑者が、勾留先のデンマークで釈放された。
日本側が身柄の引き渡しを求めていたが、デンマーク司法省は認めなかった。ワトソン容疑者は釈放後にフランスへ行き、反捕鯨活動を継続すると表明した。
SSは各国の捕鯨船に小型船で体当たりしたり、火炎瓶を投げつけたりと、危険な活動を繰り返してきた無法者の集団だ。平成22年にはメンバーが日本の捕鯨船団を攻撃し、船員を負傷させる事件を起こした。
その首謀者を釈放したデンマーク政府は法に基づく正義を否定したことになる。日本との友好を望まない異常な行動でもある。到底容認できない。
林芳正官房長官は会見で、デンマークに遺憾である旨を申し入れたと語ったが、それで済む話なのか。石破茂政権は、日本の怒りをもっと明確に伝える外交措置を講じるべきだ。
ワトソン容疑者は今年7月、日本の捕鯨船団を妨害するためデンマーク自治領グリーンランドに立ち寄ったところ、海保の国際手配に基づき現地の警察に身柄を拘束された。日本側は引き渡しを求めたが、反捕鯨を標榜(ひょうぼう)するフランスのマクロン大統領らが反対してデンマーク政府に働きかけ、勾留は5カ月間に及んだ。
海保による国際手配は国際刑事警察機構(ICPO)を通じた正当なものだ。法の裁きを受けさせずにデンマークが釈放したことは、SSの暴力を伴う無法の容認を意味する。パニエルナシェ仏エコロジー移行相が「本当に安心した」と、釈放を歓迎する声明を出したのも言語道断である。
石破首相や岩屋毅外相、外務省はいったい何をしていたのか。身柄の引き渡しがかなわなかったのは外交上の敗北である。猛省が必要だ。
ワトソン容疑者はパリで会見し、「(日本の捕鯨船が)南極海のサンクチュアリ(保護区)に入ってきたら介入する」と述べた。だが、日本の捕鯨は合法であり、ワトソン容疑者が無法を繰り返すのを許してはならない。政府はフランスに強く働きかけ、容疑者の拘束と引き渡しを実現してもらいたい。
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2024年12月24日付産経新聞【主張】を転載しています
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