台湾の沿岸警備を担う海巡署が、中国人が乗り組む貨物船が台湾北部海域で通信用海底ケーブルを切断した疑いがあると発表し、捜査に乗り出した。
Ship that cut Taiwanese undersea cable

台湾で海底ケーブルを損傷させたとみられる貨物船(台湾海巡署のホームページから)

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台湾の沿岸警備を担う海巡署が、中国人が乗り組む貨物船が台湾北部海域で通信用海底ケーブルを切断した疑いがあると発表し、捜査に乗り出した。

バルト海でも近年、ロシアや中国の関与が疑われる海底ケーブル切断が起きている。海底ケーブルは国の安全や経済を支える基幹インフラだ。有事やその直前に、敵国による攻撃の標的となる。日本は、台湾や欧州での海底ケーブル切断を対岸の火事と見てはならない。

疑惑の貨物船の船籍はカメルーンだが、船主は香港籍で船員7人全員が中国人だった。韓国の釜山港に向かったため海巡署は韓国に協力を要請した。事実解明と公表を求めたい。

日本の外国との通信の99%は海底ケーブル経由だ。中国が台湾に侵攻する際には、台湾周辺のみならず日本につながる海底ケーブルも切断される恐れが大きい。世界との通信が閉ざされかねない。

台湾周辺では近年、中国民間船による海底ケーブル破損が多発しているとの専門家の指摘もある。グレーゾーンの破壊工作が進んでいるのではないか。

自民党の萩生田光一元政調会長

自民党の萩生田光一元政調会長はネット番組で「客観的に見て意図的にやっているのではないかと思われる案件が非常に多い。国際会議の中できちんと(問題視して)やるべきだ」と指摘した。その通りである。

なぜ同じことを岩屋毅外相や林芳正官房長官が語らないのか。日本政府は中国に説明責任を果たすよう迫らねばならない。2月に予定される日中外相会談は絶好の機会であろう。

バルト海でも昨年末、フィンランドとエストニアを結ぶ海底ケーブルが損傷した。フィンランドは、南太平洋のクック諸島船籍でロシア産原油を積載した油槽船が関与した疑いがあるとして拿捕(だほ)した。中国の影もちらつく。昨年11月にリトアニア・スウェーデン間などの海底ケーブルが破損し、関係各国の当局は現場付近を通航した中国籍の貨物船を捜索した。

NATOのルッテ事務総長

北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は、バルト海での軍事プレゼンス強化を表明した。日本も海底ケーブル問題を安全保障の重要課題ととらえたい。欧米や台湾とも連携し、監視などのケーブル防護や迅速な復旧の手立てを講じるべきだ。

2025年1月10日付産経新聞【主張】を転載しています

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