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台湾で、9月18-19日の2日間、初めてであり、かつ画期的な国際会議が開かれた。
「Design of Post-Russia Space and its Impact on the macro-regions of East, Southeast & Central Asia」とのテーマで、ロシアの捕虜国の代表者たち、欧米や日本の研究者や支援者、そして台湾の政治家や研究者たちが集った。ロシアと中国という2つの権威主義国家によって起きている問題が議題だ。ロシアは現にウクライナを侵略しており、中国は台湾を併合する野望を隠そうともしていない。この2つは連動しており、自由と民主主義と国際秩序を重んじる国々がどう連携するかが鍵だ。
この国際会議は 「Free Nations of Post Russia Forum(ロシア後の自由な民族フォーラム)」という名前で、今回の台湾での会議が12回目の開催だ。第1回は2022年5月にポーランドのワルシャワで開かれた。アジアでは2回目であり、昨年8月に東京で第7回フォーラムが開催されて以来だ。第7回フォーラムについては産経新聞も報じている。2023年3月にはこのフォーラムはロシア政府によって「望ましくない団体」に指定された。ロシアのC捕虜国の代表者たちが集まり、ロシアは41に分裂するとの地図を掲げている。ロシア政府にとっては都合の悪いことが話し合われているフォーラムということなのだろう。
初日は公開イベントであり、名門である台北の国立政治大学で開催された。初日のハイライトは、アンナ・フォティガ元ポーランド外相の紹介によって行われた台湾外交部の呉志中政務次長の独占スピーチだった。呉は、台湾はウクライナを100%支持しており、様々な支援を行っていることを力強く述べた。正直に言うと、台湾のウクライナ支援は私にはあまり強い印象がこれまでなかったので、呉が強く言い切ったことには少し驚きもあった。
呉は3つのエピソードを紹介して中国の危険性を訴えた。一つ目は、2015年9月、習近平がオバマ大統領に対し、「南シナ海を軍事化する意図はない」と言った時のことだ。しかし、いまはどうなっているか。二つ目は、2015年5月、習近平がケリー国務長官に対し、「広大な太平洋には、中国と米国の両国を受け入れるだけの十分な空間がある」と言った時のことだ。三つ目は、2023年11月、習近平がバイデン大統領に「地球は十分に大きく米中の共存は可能だ」と言った時のことだ。中国の野望はどんどん大きくなってきていると呉は指摘した。
今回のフォーラムの特徴だと私が思うことの一つは、議論において日本について話題となることが多かったことだ。昨年日本でフォーラムが開催されたときよりも、今回の方が、日本についてより多く議論したことは間違いない。
例えば、「DISCUSSION PANEL 2: PostRussia Independent States & New geopolitical face of the Asia-Pacific macroregion」において、モデレーターのセルゲイ・スムレニー(ヨーロッパ・レジリエンス・イニシアティブ・センター)が、パネリストの一人の石井英俊に対して行った質問はおもしろかった。「日本は、ロシア、中国、北朝鮮という3つの核兵器保有国に囲まれている。例えば、そのうちの一つを引き抜こう(get rid of at least one of them)と考えたりしないのか」とセルゲイは言った。
石井英俊は私の夫であり、インド太平洋人権情報センター代表だ。また、石井は最近発刊された『やがてロシアの崩壊がはじまる』の著者でもある。彼の隣に座っていた『Failed State: A Guide to Russia’s Rupture』の著者であるヤヌシュ・ブガイスキが、石井英俊のその本を手にとって掲げてみせたシーンは、私にとってとても素敵なものだった。
さて、石井はセルゲイに次のように答えた。「安倍政権と岸田政権では、政策が大きく変わった。安倍総理は自由と民主主義の価値を非常に重んじる政治家だったが、同時にリアリストでもあった。安倍総理は、中国とロシアの2つを同時に敵にして戦う力は日本には無いと考えた。だから安倍総理はロシアとの対話を重視し、プーチンとは27回も会談を行った。しかし、2024年2月24日に全てが大きく変わった。岸田政権はロシアによるウクライナへの攻撃を「侵略」であるとして厳しく批判し、100%ウクライナの側に立っている。日本は自由主義諸国の結束が大事だと考えているのだ。」
日本がなぜ熱心にウクライナ支援を行っているかのポイントはとても重要だ。私も自分のスピーチにおいてこの点を強調した。
「なぜ、それでも日本はウクライナにそこまで関心を持つのか?それは権威主義国家のロシアの勝利が、中国共産党率いる中国に誤ったメッセージを送ることになるからだ。ロシアが勝てば、不法に武力で押しに押して他国を侵略すれば、現状を変え、征服し、欲しい領土を手に入れることができるというパターンや前例を作ることになる。そのようなケースが現実になれば、中国へのインセンティブになるだろう。侵略は決して許されないということを示すために、我々は強く立ち向かわなければならない。」
台湾有事は日本有事だ。台湾有事を起こさせないためにも、ロシアを勝たせてはいけない。これがいまの日本の基本戦略であり、私はこれは正しいと考えている。
2日目は非公開イベントであるため、議論の中身を紹介することはできない。ただ、これだけは私は報告できる。台湾総統府報道官の李問によって台湾の政策について、くわしく説明が行われ、フォーラム参加者と長時間の有意義なディスカッションが行われた。また、立法委員(国会議員)の陳冠廷とも、彼のオフィスにおいて素晴らしいディスカッションが行われた。
いまロシアに支配されているが独立を訴えている捕虜国、ロシアにいま侵略されているウクライナ、そして中国からの侵略の危険性に直面している台湾という、それぞれ状況は違うが同じ問題を抱えている人々が、台湾に集った。結局、問題の根っこは同じなのだ。そして、解決策も同じだ。自由と民主主義と法の支配を重んじる国々が団結していかなければならない。
筆者:石井陽子(YouTuber)
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