
ドライバーがハンドルから手を離して自動運転で走行する「T2」のトラック
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高速道路の路肩などを利用して荷物を自動搬送する「自動物流道路」の実現に向け、国土交通省の有識者検討会が最終報告書をまとめた。
民間事業者と連携して技術開発を進め、約10年後までに東京―大阪の一部区間での導入を目指すとした。
トラック運転手の不足により物流の停滞が懸念されている。暮らしや産業への影響を軽減するために、新技術で運転手不足を補うことは重要だ。着実に技術開発を進めてもらいたい。
自動物流道路は、無人カートによって荷物を自動搬送する物流の専用レーンだ。高速道路の路肩や中央分離帯、地下などを活用することが想定されている。国交省は昨年2月から有識者検討会で技術的な課題などについて議論を進めてきた。
最終報告書によると、時速70~80キロで24時間搬送する。当初は時速30キロでの搬送が想定されていたが、トラック並みに引き上げることを目指す。

新東名高速道路で建設中の新秦野(神奈川県)―新御殿場(静岡県)区間(延長25キロ)などで令和9年度までに搬送実験を実施する。そのうえで小規模な改良で実装可能なルートで運用を始めることを念頭に、環境整備を進めるべきだとした。
トラック運転手の残業規制が昨年4月から導入された。輸送力低下に伴う物流危機は「2024年問題」ともいわれたが、共同輸送の進展もあり、これまでのところ深刻な物流の停滞は生じていない。

ただ、トラック運転手の高齢化もあり令和12年度に運べる荷物は元年度から34%減ると試算されており、対策は着実に進める必要がある。自動物流道路の実現で、12年度に運べなくなると試算される荷物のうち最大22%をカバーできると見込む。
国交省は5月に、必要となる要素技術や事業成立の要件などについて民間企業と意見交換するコンソーシアムを設立した。参加企業は7月末現在で104社にのぼっており、今秋から官民で実証実験を開始する。
自動物流道路はスイスや英国など海外でも導入を計画している国がある。コストを含め実現には課題が多いのは事実だが、実用化できれば日本発の物流インフラとして海外にも市場が広がる可能性がある。新たな成長産業としても期待したい。

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2025年9月5日付産経新聞【主張】を転載しています
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