工事が一時中止となった、メガソーラー開発工事の現場=11月、千葉県鴨川市
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政府が大規模太陽光発電所(メガソーラー)の支援制度を廃止する方針を固めた。
市場価格に上乗せして電気を買い取る制度について、令和9年度以降、新規に太陽光パネルを設置する事業に対する補助をやめるという。
石原宏高環境相は、メガソーラーの環境影響評価(アセスメント)を義務付ける対象を拡大する意向も示している。
北海道・釧路湿原の周辺をはじめ、メガソーラーの建設による生態系や安全性への懸念が増している。地域住民とトラブルとなるケースも相次いでおり、環境破壊につながる開発に歯止めをかける。
東日本大震災後に政府が進めてきた再生可能エネルギーの普及戦略の転換となるが、地球環境を守るために身近な自然環境を傷つけるのでは本末転倒だ。政府の方針は妥当である。
資源小国のわが国にとって、再エネは純国産エネルギーと位置付けられる。発電時に二酸化炭素の発生もなく、地球環境対策としても推進されてきた。

そのために旧民主党政権が平成24年に導入したのが、電力会社が市場価格より高値で再エネ電力を買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」だ。令和4年度からは市場価格に連動して一定の補助金を上乗せする新制度(FIP)に移行した。
だが、日本の平地面積当たりの太陽光導入容量は主要国トップで、2位のドイツの2倍以上だ。全国でトラブルが増えている背景には、メガソーラーの適地が乏しくなっていることがある。買い取り費用の一部は、「再エネ賦課金」として電気料金に上乗せされており、料金高騰の一因にもなっている。

エネルギーの脱炭素化は国際的な要請ではあるが、これ以上、メガソーラーに対する支援を継続すれば、こうした弊害が拡大するばかりだ。
一方で、政府は屋根置きや一般家庭用は引き続き支援の対象とする方針だ。メガソーラーの多くは価格の安い中国製の太陽光パネルが使われているが、屋根置きや家庭用では薄く折り曲げられる次世代型の「ペロブスカイト太陽電池」の採用が期待できる。
ペロブスカイト太陽電池は日本発の技術だ。支援によって国産パネルの普及が進めば、経済安全保障にも資するはずだ。

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2025年12月19日付産経新聞【主張】を転載しています
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