
端島(通称・軍艦島)の元島民に謝罪するNHKの稲葉延雄会長(奥左から2人目)=26日午後、東京都千代田区 (岩崎叶汰撮影)
This post is also available in: English
長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)を扱ったNHK番組「緑なき島」を巡る問題で、NHKの稲葉延雄会長が元島民に対し、名誉を傷つけたとして初めて謝罪した。
稲葉会長の謝罪は妥当である。だが、NHKは自局のニュースで謝罪について報じていない。
これはおかしい。NHKは本当に反省しているのか。

「緑なき島」の映像を韓国メディアが悪用したことで、元島民はもちろん日本国の名誉も傷つけられた。悪用の原因をつくったNHKにはさらなる具体的な行動が求められる。
まず、稲葉会長の謝罪を自局できちんと報じるべきだ。その上で一連の経緯を検証する番組を作り、映像で歪(ゆが)められた軍艦島へのマイナスイメージを払拭すべきだ。韓国側へ事実関係を説明することも欠かせない。
昭和30年制作の「緑なき島」には軍艦島の炭坑内として、裸電球がつるされた狭い坑道を作業員がはって進む様子などが映されていた。だが、元島民によればこの映像は軍艦島のものではなかった。
映像は韓国メディアに悪用され、朝鮮人労働者が劣悪な環境で強制労働させられていた証拠のように扱われた。
元島民の抗議を受け、NHKは昨年12月、東京簡裁で成立した調停で、映像の一部が軍艦島かどうか「確認が得られていない」と認めた。だが訂正や謝罪はせず、3月26日にようやく稲葉会長が元島民と面会し、「つらい思いをさせ、大変申し訳なく思っている」と述べた。

この謝罪に先立ち、元島民が「日本国民の尊厳と日本の国益に関わる問題」として、謝罪番組の放送を求めたのは当然だ。NHKはなぜ応じないのか。
「緑なき島」の映像を無断で反日プロパガンダに悪用したのは韓国メディアなどだ。2010年に韓国の公共放送KBSが映像を使った歴史番組「地獄の島 軍艦島」を放送した。これは韓国の国立日帝強制動員歴史館でも上映され、強制労働があったという事実無根の話が拡散された。
軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」は10年前に世界文化遺産に登録されたが、韓国側は激しく反対した。
NHKが素早く行動していれば、不当な反対にさらされることもなかったのである。
◇
2025年3月30日付産経新聞【主張】を転載しています
This post is also available in: English