馬が横を向いているように見える「馬ロック」。岩肌に生えた松が風にたなびくたてがみのようで見事だ =静岡県西伊豆町(ドローン使用、川口良介撮影)
This post is also available in: English
来年の干支は午(うま)。縁起のいい馬に見える岩壁「馬ロック」が駿河湾に面した静岡県西伊豆町にある。
岩肌のくぼみが細めた目に、下部の黒ずみは鼻先に…。横を向いた馬が水を飲んでいるように見えてくる。切り立つ尾根に生える松は海風になびくたてがみだ。

伊豆半島は海底火山がプレートの動きにより約100万年前に本州に衝突してできた。盛んな火山活動でさまざまな地形が形成され、一帯は国連教育科学文化機関(ユネスコ)が定める「世界ジオパーク」に認定されている。

馬ロックのある「黄金崎」も火山活動ででき、黄白色の岩肌は地熱で岩に含まれる成分が変色したものだ。三島由紀夫も著作「獣の戯れ」で「平滑な一枚の黄金の板のやう」と描写している。
「昔は馬というよりはロバのようだった」と話すのは近くに住み、ジオガイドも務める浅賀丈吉さん(71)。平成元年に「額」から「鼻先」にかけての岩が崩落し、すっきりして「馬」に見えるようになったそうだ。
愛称がついたのは前回、午年だった平成26年。地元の商工会が人が集まるスポットにしようと全国から愛称を募集し、決定。立ち寄って馬券が当たった人がいたという噂を聞き、必勝祈願の絵馬やクッキーなどの商品も開発した。

今も馬ロックを見渡せる展望台には「GⅠで勝てますように」「万馬券的中」など競馬ファンの願いが書かれた絵馬が多く掛けられている。旅行で訪れた東京都足立区の長倉伸行さん(60)は「まさに馬。出す枚数は少ないけど年賀状に使います」と写真を撮影していた。
12年に一度の午年に合わせ、地元で「何かイベントをやりたいねと話している」と年男でもある浅賀さん。地球が生み出したダイナミックな絶壁は、人が集まり盛り上がりをみせる年になりそうだ。
筆者:鴨川一也(産経新聞写真報道局)
This post is also available in: English

