大規模火災が起きた高層住宅群=香港北部・大埔(西見由章撮影)
This post is also available in: English
香港の高層マンション群を紅蓮(ぐれん)の炎に包んだ大規模火災は、いまだ被害の全容がつかめぬ大惨事となった。
外装工事の竹製の足場や可燃性の防護ネットが被害を広げたとみられる。厳しい防火対策がとられている日本ではあり得ないともされるが、果たしてそうか。
香港でも、可燃性のネットは規制されていた。だから施工会社の3人が過失致死容疑で逮捕されている。法令は守られなくては意味をなさない。

映画「タワーリング・インフェルノ」では、設計上あり得ない大規模火災が起きた。建築費用を惜しんだ手抜き工事がその原因だった。惨事の陰には必ず不備や想定外がある。
映画だけの話ではない。死者33人を数えた昭和57年のホテルニュージャパン火災では、スプリンクラーが配管につながっていない、防火扉が閉まらないなどの不備が明らかになった。
44人が亡くなった平成13年の新宿歌舞伎町ビル火災では自動火災報知設備の電源が切られており、物置化していた階段が避難経路をふさいでいた。
70人以上が犠牲となった2017年、ロンドンの高層住宅グレンフェル・タワー火災では、規制前の建設だったためスプリンクラーの設置義務がなく、外壁の耐火性や防火壁のあり方などが問題視された。
香港の惨事を、かの地特有の悲劇と断じるのは誤りである。身体や財産に多大な損害を与える大規模火災は、いつ、どこででも発生し得る。
国内でも大分市で住宅など180棟以上が焼ける大規模火災が発生したばかりだ。空き家を含む木造住宅が立ち並ぶ住宅密集地だった。消防活動を阻む細い道路など、同様の危険をはらむ住宅街は全国に点在する。

香港や大分の火災を、身近な防災環境の確認、点検を進めるための機としたい。
住居や職場の避難経路は確保されているか。避難訓練は適宜行われているか。火災報知機やスプリンクラーは正常に稼働するか。初期消火態勢はとられているか。平時にやっておかなくてはならない事項は数多い。
政府も改めて、高層ビルや住宅などにおける法令順守の確認を強化してもらいたい。大惨事が起きた後に、検査漏れの不備が明らかになるような事態は許されない。
◇
2025年11月29日付産経新聞【主張】を転載しています
This post is also available in: English

