自民党総裁選後に開かれた両院議員総会であいさつする高市早苗新総裁=10月4日午後、東京・永田町の党本部
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本年のノーベル経済学賞は「創造的破壊を通じた持続的成長の理論」に関する功績により、ジョエル・モキイア氏、ピーター・ハウイット氏、フィリップ・アギオン氏の3氏に授与された。同理論は、イノベーションや技術発展が既存の社会的システムを破壊し、新しい仕組みへと置き換える過程を通じて、長期的な経済成長が促進されることを説明している。
この理論は、我が国初の女性総理大臣・高市早苗氏の誕生という歴史的局面において、日本のマクロ経済と政治の行方を考える上で大きな示唆を与えるものだろう。実際、自由民主党と日本維新の会による新たな連立政権は、アベノミクス改革の精神を再定義するかのような大胆な政策アジェンダを掲げている。高市政権は、これまで抵抗勢力の存在によって停滞してきた政治・経済改革に、創造的破壊の新たな波をもたらす可能性を秘めている。

その兆候は、政権発足前から既に現れていた。自民党新執行部は政策的相違を背景に、公明党との25年に及ぶ連立を解消した。表面的には自民党政治家の不祥事が離脱理由とされているが、実際には外交政策、特に対中国政策における根本的な方針の違いが決定的要因であったと考えられる。公明党は伝統的にハト派的な外交姿勢を好む一方、高市政権は安倍政権以上にタカ派的な立場を鮮明にしている。
こうした背景のもと、高市政権は維新の会と驚くべきスピードで連立を組み、両党間の合意文書は我が国の内政・外交を大きく再定義する内容となった。
これらの動きは、日本に新しい時代の到来を予感させる。現在進行中の政治体制の再構築は、長らく手付かずにされてきた地政学的戦略を再定義する起爆剤となり得る。モキイア氏、ハウイット氏、アギオン氏が提唱した「創造的破壊」は単なる学術理論ではなく、現実の政治・経済の変革を映し出すものであり、日本の変革はその最新の具体例として記憶される可能性があるのではないか。
筆者:細水政和
■細水政和(ほそみず・まさかず) 1998年東京大学法学部卒、同年野村證券入社。同社仙台支店、シカゴ大学留学(MBA)、ニューヨーク支店勤務を経て、2005年から米国系ファンドのコッグヒル・キャピタル・マネジメント(シカゴ)にて日本及びアジア株のリサーチ、運用を担当。2013年から2024年までRMBキャピタル(現キュリ・キャピタル、シカゴ)においてパートナーとして日本およびインターナショナル株ポートフォリオマネジャーを歴任。2024年にサファイアテラ・キャピタルをシカゴにて設立、同社代表兼最高投資責任者(CIO)として日本株エンゲージメント投資に特化したファンドの運用を開始。
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