「熊本地震 震災ミュージアムKIOKU」で語り部を務める後藤久徳さん(右)と千奈美さん=3月16日、熊本県南阿蘇村(一居真由子撮影)
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平成28年に発生した熊本地震から4月で10年。被害が大きかった熊本県南阿蘇村には、地震の遺構を展示する「熊本地震 震災ミュージアムKIOKU(きおく)」が建ち、60人の語り部が震災の教訓を伝えている。語り部は被災経験の有無や被害の程度を問わず応募でき、体験や思いを交えて熊本地震を語り継ぐ。遺構に触れ話に耳を傾けると、命をつなぐための備えがみえてくる。
関心の広がり実感
同県阿蘇市で被災した後藤久徳さん(62)、千奈美さん=同=は昨年4月に夫婦で語り部となった。熊本地震は28年4月14日に前震、同16日に本震が発生し、最大震度7を2度観測。阿蘇市でも本震で震度6弱を観測し、後藤さん宅は壁などにひびが入り、水道や電気もストップした。
地震時は高齢の両親との4人暮らし。両親が避難所に行くのをためらったため、車中泊を選択した。後藤さんは「指定の避難所があっても高齢者はなかなか動かない。支援物資や必要な情報が得られず、偶然出会った自衛隊から食料をもらったり、大分に買い物に行ったりしてなんとか過ごした」と振り返る。余震が落ち着くまで10日間ほどの車中泊は十分な睡眠がとれず、疲労が蓄積するばかりだったという。

災害が起きても「心配いらない」「行きたくない」と避難所の利用を避ける傾向は高齢者ほど高いとされる。後藤さんは、家族で防災意識を高める重要性や、地区で協力体制を構築する必要性を伝え、「できることを今日から少しでもやってほしい」と訴える。
語り部活動に誘ったのは千奈美さんだった。「大きな被害を受けていない自分ができるか悩んだが、『忘れない』『生かそう』という思いがあった」と語る。被害が甚大だった場所を伝えると「行ってみます」という来館者もいて、関心が広がっていることを実感するという。
経験や思いが教訓
「熊本地震 震災ミュージアムKIOKU(きおく)」は令和5年7月に開館した。地震で損壊した東海大阿蘇キャンパスの跡地に建ち、亀裂が入った校舎や地表に現れた断層、大破した乗用車など、熊本地震を伝える遺構を見学できる。
筆者:一居真由子(産経新聞)
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