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甲冑を身に着けた中高生が駒役となり、姫路城をバックに行われた人間将棋=兵庫県姫路市

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戦国期の豊臣秀吉が楽しんだという故事にならい、人間を将棋の駒に見立てて巨大な将棋盤で対戦するユニークな「人間将棋」が今月上旬、兵庫県姫路市の姫路城で5年ぶりに行われた。一般的な将棋とはちょっと異なる、特有のルールがある人間将棋。世界遺産の前で繰り広げられた、戦(いくさ)の「哲学」を体現するその世界をのぞいてみた。

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姫路城で5年ぶり

11月3日、姫路城三の丸広場。縦横18メートル、9×9の将棋盤のようなマス目の線が引かれた舞台に、戦国の装束をまとった西軍大将の豊島将之九段(34)と、東軍大将の菅井竜也八段(32)が登場した。

西軍大将の豊島将之九段(左)と東軍大将の菅井竜也八段(右から2人目)=兵庫県姫路市

豊島九段は「絶好の戦(いくさ)日和になった。わしのコンディションも抜群じゃ。菅井殿は見事な振り飛車の使い手じゃが、自信はある」と武者言葉で意気込みを語り、会場を沸かせた。

太鼓や笛の音が鳴り響き合戦の火ぶたが切られた。先手の菅井八段は、「さあいくぞ。5八飛車」と指示。「いきなり飛車を動かしてくるとは想定外じゃ」と驚く豊島九段は、「8四歩」とオーソドックスな手で応じた。

当代一流のトップ棋士の指揮通りに、甲冑(かっちゅう)に身を包んだ駒役の中高生ら約40人が盤上を動き回る。壮麗な姫路城をバックに繰り広げられた熱戦は、豊島九段率いる西軍が勝利した。

新型コロナウイルス禍を挟んで5年ぶりの開催となった今回。雨天のため市立白鷺(はくろ)小中学校の体育館で実施した初日(2日)と合わせ、2日間で1万人以上が来場したという。

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秀吉も家来を駒に

人間将棋といえば、将棋駒の生産量日本一を誇る山形県天童市が有名だ。昭和31年から毎年桜が咲き誇る4月に開催され、全国からファンを引き付けている。

将棋ファンをはじめ多くの人々が観覧した人間将棋=兵庫県姫路市

姫路城では「平成の大修理」を記念して平成27年から始まった。天下分け目の関ケ原合戦(1600年)の舞台となった岐阜県関ケ原町でも29年から開催されている。

一線で活躍するトップ棋士らを大将に招き、人間の駒を指揮するイベントとして行われている人間将棋だが、その起源は戦国期にさかのぼる。豊臣秀吉が、おいで関白の豊臣秀次を相手に伏見城で小姓や腰元たちを駒として、将棋の野試合を楽しんだという故事がルーツなのだという。

人間将棋では「全ての駒を最低一度は動かす」という、一般的な将棋にはない独特のルールがある。相手から取った駒を、自らの駒として使うことができる将棋。姫路ゆかりの戦国武将、黒田官兵衛の「人は殺さずに生かすべき」という哲学を、人間将棋は視覚的に体現しているともいえる。

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「普段より頭使う」

「大将」として駒武者を率いて戦った棋士たちにも刺激になったようだ。

姫路城で熱戦を繰り広げた豊島九段は、「素晴らしい経験になった。全部の駒を動かさないといけないので普段の対局より、頭を使って指したかもしれない」と振り返った。

多くの観光客でにぎわう場所で行う対局でもある。初めて人間将棋に臨んだという菅井八段も「こんなに多くの方の前で将棋を指すのは久しぶりで、気持ちが引き締まった」と語った。

筆者:横山由紀子(産経新聞)

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