野球の聖地、米ニューヨーク州クーパーズタウンの野球殿堂に、イチローさんが初の日本人プレーヤーとして加わった。
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イチローさんの米国野球殿堂入りを記念した特別号外を読む男性=7月28日午前、神戸市中央区

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野球の聖地、米ニューヨーク州クーパーズタウンの野球殿堂に、初の日本人プレーヤーが加わった。

大リーグで10年連続200安打や年間262安打など数々の金字塔を打ち立て、類(たぐ)いまれな走攻守で全米のファンにも強烈な記憶を残したイチローさんである。

イチローさんは27日、殿堂入りの記念式典で約20分間、英語によるスピーチを行い「この場にいることは素晴らしい夢のようだ」と語った。

唯一、日本語で述べたのは、日本人大リーガーのパイオニアとして渡米の道を開いた野茂英雄さんに対する「野茂さん、ありがとうございました」という感謝の言葉だった。

自身のレリーフを手に笑顔を見せるイチローさん=7月27日、ニューヨーク州クーパーズタウン(共同)

米野球殿堂入りは、アジア人選手としても初の快挙である。野茂さん、松井秀喜さんも候補入りはしたが得票率が及ばず、すでに資格を失っている。イチローさんは、満票での選出にわずか1票足りなかった。

将来的には、投打の二刀流で全米を席巻する大谷翔平選手が必ず加わるだろう。そして大谷は、イチローさんや長距離砲としての先駆者、松井さんに感謝の言葉を述べるはずだ。

さらにその先で、大谷の活躍に触発された少年が大リーグに挑戦して殿堂入りし、同じクーパーズタウンで大谷に対して感謝のスピーチを行う。そんなドラマの系譜を期待したい。

イチローさんのスピーチは、さまざまな示唆に富む。

夢を目標とし、達成するためには努力を怠らないこと。信念を貫けば乗り越えられる。毎日毎日、用具を手元に置き、気を配ってきたのは、グラブのひもが緩んでエラーしたり、スパイクを掃除しなかったために盗塁を失敗したりするリスクを冒したくなかったから。小さなことを積み重ねていけば、達成できることに限界はない。一貫性が達成への土台となる。

Ichiro Suzuki
マリナーズ時代のイチローさん=2015年5月

誰もが大リーグのスーパースターになれるわけではないが、自ら描いた夢や、設定した目標に向けて小さな努力を続けることはできる。

それがイチローさんと同じ道を歩むことだと思えば、なんともすてきではないか。そして夢や目標は、必ずしも野球やスポーツでなくてもいい。イチローさんの殿堂入りの慶事を、ただ喜ぶだけではもったいない。自らへの勧奨としてみたい。

2025年7月29日付産経新聞【主張】を転載しています

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