米国が、南米ベネズエラへの軍事攻撃に踏み切り、マドゥロ大統領らを拘束した。トランプ米大統領はベネズエラを含む中南米から流入する合成麻薬フェンタニルを「大量破壊兵器」とみなし、ベネズエラを「麻薬国家」、マドゥロ氏を「麻薬テロリスト」と指定して退陣を迫っていた。
Donald Trump Venezuela

1月3日、米フロリダ州の私邸で記者会見するトランプ大統領。米軍によるベネズエラのマドゥロ大統領拘束を正当化し、政権移行まで米国がベネズエラを「運営する」と表明した(ロイター=共同)

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米国が、南米ベネズエラへの軍事攻撃に踏み切り、同国の反米社会主義者、マドゥロ大統領らを拘束した。

トランプ米大統領はベネズエラを含む中南米から米国へ流入する合成麻薬フェンタニルを「大量破壊兵器」とみなし、ベネズエラを「麻薬国家」、マドゥロ氏を「麻薬テロリスト」と指定して退陣を迫っていた。

米国の攻撃に対し、アルゼンチンが支持する一方、他の中南米諸国などから「主権侵害」「力による現状変更」と批判が出ている。中国とロシアも非難したが、彼らにその資格はないだろう。

1月3日、煙が上がるベネズエラの首都カラカスの上空を飛行するヘリコプター(提供映像から、ロイター)

トランプ政権には、各国の疑問に応え、マドゥロ氏拘束に至った根拠や経緯を説明してほしい。今回の事態は早期に収拾したい。ベネズエラの民主化を促すべきだ。

マドゥロ氏は反米左派の故チャベス前大統領の後継者として2013年に大統領に就いた。世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラだがマドゥロ政権のバラマキ政策で財政破綻しハイパーインフレになった。大統領選では野党側を徹底弾圧し政権に居座った。米国など各国は退陣を求めていた。

この10年間で人口の約4分の1の約800万人が国外へ逃れ出た。自由も民主主義も豊かさもない破綻国家で、マドゥロ氏の拘束を国内外の多くのベネズエラ国民が歓迎している。

ヘリポートから裁判所に向かうベネズエラのマドゥロ大統領(右奥)=1月5日、米ニューヨーク・マンハッタン(ロイター=共同)

米国による他国への武力攻撃は初めてではない。1989年末にパナマ進攻を始め、独裁者のノリエガ将軍を麻薬密売容疑で逮捕した。昨年6月にはイランの核施設を攻撃した。

マドゥロ政権と中露が接近し、とりわけ中国はベネズエラの油田に多額の投資をしてきた。放置すればベネズエラは中露の思惑のもと反米軍事拠点になりかねなかった。マドゥロ氏排除には、ベネズエラを冷戦期のような「第2のキューバ」にさせない意味合いがあろう。

米国の関心が西半球にのみ割かれるのは望ましくない。米国が常に台湾有事や朝鮮半島有事に対処できる環境が重要だ。

高市早苗首相

高市早苗首相が唯一の同盟国である米国の今回の行動に対し、その是非に直接言及せず、「ベネズエラにおける民主主義の回復および情勢の安定化に向けた外交努力を進めていく」と発信したのは妥当である。

2026年1月6日付産経新聞【主張】を転載しています

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