韓国が憲法崩壊の危機に直面する中、尹相現議員が尹大統領の弾劾と民主主義を守るための戦いについて語る
lead photo Yoon lawmaker interview Kenji Yoshida rs

JAPAN Forwardとのインタビューに応じる尹相現議員(©吉田賢司)

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韓国与党「国民の力」の尹相現(ユン・サンヒョン)議員は、『韓国はここ数十年で最も不安定な状況にある』と語った。

1月26日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、12月3日の短命な戒厳令布告をめぐり、内乱首謀の容疑で正式に起訴された。有罪となれば、無期懲役または死刑に処される可能性もある。

現在勾留中の大統領はまた、自身の政治的運命を左右する憲法裁判所の判決を待っている。8人の判事のうち少なくとも6人が弾劾訴追を認めれば、大統領は罷免されることになる。

尹議員はJAPAN Forwardの独占インタビューで、激化する韓国の政治的混乱について見解を述べた。また、民主主義の侵食に警鐘を鳴らし、法治回復に向けた自身の闘いについても語った。

米ジョージタウン大学とジョージ・ワシントン大学で学び、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で教鞭を執った尹議員は、アメリカ通として広く知られている。

尹大統領の戒厳令は正当だったのか?

韓国憲法第77条は、戒厳令の発動条件として戦時、武力紛争、またはそれに準ずる国家緊急事態を定めている。12月3日がその条件を満たしていたか否かついては、国会議員や国民の間で意見が分かれるが、尹大統領は国家が緊急事態に直面していたと主張している。重要なのは、大統領と一般国民の間に明らかな認識のギャップが存在することだ。

では、なぜ大統領は国家非常事態だと判断したのか。その理由の一つは、最大野党「共に民主党」がこの2年半にわたり、弾劾を武器に立法と司法機能を麻痺させてきたことにある。尹大統領に対する国会での弾劾訴追を含め、国会多数派を占める共に民主党とその衛星政党は、これまでに国家高官や検察に対して計29件の弾劾訴追を主導してきた。

国家予算の圧縮

次に、予算をめぐる対立がある。2024年の国家予算は677.4兆ウォン(約5097億ドル)だったが、民主党は与党との協議なしに一方的に4兆ウォン以上を削減した。行政府、検察、警察の特殊活動費は全面的に削られた。対照的に、文在寅前大統領の政権下では同様の経費に90億ウォン(約620万ドル)以上が割り当てられていた。さらに深刻なのは、原子力開発、ガス備蓄探査、小型モジュール炉など、尹政権の主要政策に関わる資金が大幅に削減されたことだ。

韓国は外から見ると、綺麗に機能する機械のように映るかもしれないが、その内部では歯車が激しく競り合っている。尹大統領は、非常戒厳令を発動することで、この状況を国民に直接知らせようとしたのだ。

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12月11日の国会質疑で、尹議員の発言が尹大統領への支持を集めるターニングポイントになったようだが。

12月3日の戒厳令布告後、「共に民主党」と「反尹」派らは、即座にこれを内乱と断定し、大統領の弾劾を推し進めた。しかし、刑法第87条と第91条を確認してみよう。これらの条文では、内乱を「国土を簒奪し、憲法や法律を破壊する目的で暴動を扇動した者」と定義している。

12月28日、光化門広場で「親尹」支持者に向けて演説する尹相現議員(©吉田賢司)

常識的に考えれば、現職の大統領が、自ら守ると誓った憲法を破壊する目的で暴動を起こすなど、到底あり得ない話だ。しかし、野党はこのシナリオを執拗に押し付け、巧妙なプロパガンダへと仕立て上げた。残念ながら、多くのメディアや政治家はこれを無批判に受け入れている。

与党・国民の力が危機に瀕したとき、当時検事総長だった尹錫悦氏を迎え入れ、党の再建を託した。尹氏のリーダーシップのもと、保守派は2022年の大統領選挙で僅差の勝利を収めた。本来、人としての基本的な良識として、少なくとも大統領の言葉に耳を傾けるべきだ。しかし、わが党の多くの議員は、共に民主党主導の世論キャンペーンに圧倒され、恐れを抱き、反撃できずにいる。

私が12月11日に行った国会質疑と演説は、尹大統領の立場を国民に伝えることを目的としたものだった。特に、当時の韓悳洙(ハン・ドクス)首相をはじめとする閣僚らに対し、尹大統領が戒厳令を宣言した理由とその際の心境について、詳細に説明するよう求めた。

裁判所や調査当局の不可解な行動に対する懸念が高まっている。どう思うか?

尹大統領の捜査を指揮した高位公職者犯罪捜査処(高捜処)には、そもそも内乱罪を扱う管轄権がない。それにもかかわらず、同機関は明らかに不正な手法で逮捕状を請求し、ソウル西部地裁はその要請に応じ、不法的に令状を発行した。

ソウルで尹大統領の弾劾に抗議する親尹派の支持者たち(©吉田賢司)

1月26日、検察は尹大統領を内乱首謀の容疑で正式に起訴した。だが、ここでもまた検察は不正を犯している。検察庁は単なる捜査機関ではなく、人権侵害を防ぐ責任を負っている。にもかかわらず、高捜処による不当逮捕を正すどころか、むしろ尹大統領の勾留を延長する形で応じた。

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崩壊の瀬戸際

憲法裁判所法第51条は、「同一の事件について同時に刑事裁判が係属する際、弾劾裁判を中止することができる」と定めている。この規定は、同じ事件について並行して二つの裁判を行うことを避けるためだ。憲法裁判所の判決まで残り約2カ月。判決が下った後に刑事裁判を進めても決して遅くはないはずだ。

そのためにも、検察は直ちに尹大統領を釈放し、弾劾裁判で十分な弁護ができるようにすべきだ。しかし、彼らはそうしない。なぜか。結局のところ、共に民主党の意向に逆らえば、自分たちも他の多くの人々と同様に弾劾の標的になることを理解しているからだ。

つまり、我々が戦っているのは、大統領の生存のためだけではない。韓国の憲法秩序を守るための戦いでもある。韓国の放置は今、崩壊の瀬戸際にあることを強調する。

憲法裁判所の公正な裁判を期待できるのか?

現在の憲法裁判所の8人の裁判官のうち、ムン・ヒョンベ、イ・ミソン、チョン・ゲソンの3人は、いわゆる「ウリ法研究会」のメンバーである。韓国には約3,000人の裁判官がいるが、そのうちこのグループに属しているのは約150人、全体のわずか5%に過ぎない。それにもかかわらず、憲法裁判所の裁判官8人のうち3人がこの5%に属するのは極めて異例である。簡単に言えば、ウリ法研究会は左派的な政治観を強く持つ裁判官で構成されている。

意外にも、憲法裁判所が尹大統領の弾劾訴追において正当な判決を下さない可能性を疑う理由がある。

[編集者注:大統領弾劾裁判には最大180日の審理・宣告期間が与えられるが、盧武鉉元大統領の弾劾判決には63日、朴槿恵元大統領の弾劾判決には91日を要した。法律の専門家たちは、尹大統領の判決は4月上旬から中旬に下されるだろうと予想している。]

ソウルに位置する韓国の憲法裁判所(©吉田賢司)

裁判所による疑わしい行為は他にも数多くあるが、ここでは二つに絞ってみよう。憲法裁判所法第32条は、裁判所が公判中または捜査中の事件に関する関連記録の移送を要求できないと明記しているが、裁判所はこの規定を無視し、記録の移送を強行した。また、同法第40条は、弾劾審理において刑事訴訟法を適用しなければならないと定めている。しかし、裁判所は公判期日を恣意的に設定し、規定を明らかに反している。

トランプ大統領の就任式に出席するためワシントンを訪れたが、そこでの主な活動は?

1月にワシントンを訪れた際、アメリカ・ファースト政策研究所のフレッド・フライツ副会長をはじめとする影響力のある人物に何人か会った。フレッド氏らは尹大統領を賞賛し、特に韓米同盟を強化するための彼の努力を高く評価した。また、トランプ大統領が尹大統領との会談を熱望していることにも触れ、韓国情勢の円満な解決を願った。

ケビン・マッカーシー前議長や数人の共和党議員にも会ったが、彼らは皆、韓国が米国と日本との3国間パートナーシップを強化し、より強固なもに格上げした尹大統領の努力を強く支持していた。ある共和党議員は、現職大統領が捜査当局に逮捕・拘束されたことに特に衝撃を受けていた。共に民主党が行政府を掌握した場合の安全保障上のリスクについても議論を交わした。

2023年8月、キャンプ・デービッドでの岸田文雄首相、バイデン米大統領、尹錫悦大統領(©ホワイトハウス)

トランプ2期は韓国の安全保障政策にどのような影響を与えるか?

北朝鮮の核・ミサイルの脅威が強まる中、米国がどこまで拡大抑止を提供できるかが鍵となる。私の一貫した主張は、米国が韓国に拡大抑止力を提供する最善の方法は、核搭載可能な戦略潜水艦を常駐させる方針である。ただし、この潜水艦は韓国の領海内ではなく、その近海に配置されるべきだ。この方法は、1991年の「朝鮮半島非核化宣言」を尊重することにもつながる。

2023年4月、尹大統領はバイデン政権と「ワシントン宣言」に合意し、核協議グループを設立した。この合意により、米国は戦略核資産を定期的に韓国に配備することを約束した。これだけでも大きな成果と言える。

北朝鮮の脅威

同時に、北朝鮮の核・ミサイル能力の高度化を考慮することも重要だ。2023年、北朝鮮はICBM「火星18号」の発射に成功したと主張した。このICBMが通常の軌道で発射された場合、その射程は最大15,000kmに達し、米国本土にも到達する可能性がある。重要なのは、北朝鮮が大気圏再突入技術を保有しているかどうかだ。私は、トランプ政権の4年以内に、北がこの能力を獲得すると考えている。

そうなれば、ワシントンは核軍縮の段階から離れ、北朝鮮のさらなる核開発を凍結する方向へと重点を移すだろう。例えば、北に事実上の核保有国の地位を認める可能性もある。制裁を緩和し、両国の首都に連絡事務所を設置する代わりに、トランプ大統領は北朝鮮に対し、核・ミサイル開発の停止を強く求めるかもしれない。もちろん、これは韓国にとって悪夢のシナリオだ。

韓国の選択肢は何か?

一つの選択肢は、韓国が厳格な条件付きで核武装することだ。つまり、北朝鮮が核兵器を放棄すれば、韓国も同時に放棄するという方針である。

果たして現実的なプランなのか。私はそう考える。そして、トランプ政権を説得できると確信している。2024年、私は現在トランプ政権で国防次官を務めるエルブリッジ・コルビー氏と会談したが、彼は中国への抑止力として韓国の核武装に前向きだった。したがって、この選択肢は決して非現実的なものではない。

筆者:吉田賢司(ジャーナリスト)

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