東北大と筑波大が、外国人留学生の授業料を令和9年度から値上げすると発表した。留学生を受け入れていく上でも必要な措置だ。
373VZR2TZBPK5MM5UTA5OV5AAA Tohoku Sendai campus

東北大=2021年6月、仙台市

This post is also available in: English

外国人留学生を受け入れていく上でも必要な措置だ。

国立の東北大と筑波大が、留学生の授業料を令和9年度から値上げすると発表した。

いずれも現行は日本人学生と同額の年53万5800円であるのを、東北大は年90万円に、筑波大は年60万8800円に引き上げる。日本人学生や8年度以前から在籍する留学生の授業料は据え置く。

海外からの留学生は、生活支援や相談体制などに相当なコストがかかる。それらを日本人学生にも負担させるのは限界がある。留学生の授業料の値上げは妥当だ。

「差別的」と批判する声もあるが、全く当たらない。むしろ資金不足で支援が行き届かない方が留学生のためにならないだろう。大学側は、値上げ分を支援の拡充にあて、教育の質を高めたらよい。他大学も積極的に検討すべきである。

海外の大学では、留学生にさらに高い授業料を設定するケースが主流だ。英オックスフォード大は自国学生のおよそ4~6倍、米カリフォルニア大ロサンゼルス校は州内学生のおよそ3倍を課している。

日本では同額が一般的だが、文部科学省が昨年3月、国立大の授業料を定める省令を改正し、留学生については自由に設定できるようにした。

今回、東北大と筑波大が値上げを決めた意義は大きい。私立大でも早稲田大が、時期は未定だが値上げを検討していると発表した。

東北大学川内キャンパス(東北大学提供)

重要なのは、値上げ分の使途や効果を明らかにすることだ。東北大は、留学生の生活環境の充実のほか、新たな奨学金制度を創設する。筑波大は、支援体制の拡充などに全額充当するとしている。ただ、値上げは東北大が1・7倍、筑波大が1・1倍で、海外の大学に比べて小さい。それで十分かどうかも検証する必要があろう。

留学生の出身国が偏らないようにすることも大切だ。日本の大学や大学院は中国人留学生の割合が極めて高く、東北大では留学生全体の58%、筑波大でも51%が中国人留学生である。

これでは両大学が目指す「国際色豊かな教育環境」とはいいがたい。値上げ分の資金を活用し、さまざまな国や地域から優秀な留学生を集める取り組みを進めてほしい。

2025年12月26日付産経新聞【主張】を転載しています

This post is also available in: English

コメントを残す