
関税交渉を巡り、握手するトランプ米大統領(左)と赤沢亮正経済再生相。ホワイトハウスが米国時間22日、X(旧ツイッター)に投稿した
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やはりと言うべきか、米国のリーダーたちは日本を「現金自動支払機」だとみなしている。トランプ大統領は日米で合意済みの日本の対米投融資枠5500億ドル(約80兆円)について、「野球選手が受け取る契約金のようなもの。われわれが好きなように投資できる資金だ」と公言した。ラトニック米商務長官は「日本はバンカー(銀行家)だ」と論じている。
石破茂政権は日米関税合意のうち、自動車・自動車部品への15%関税の早期実施など、もっぱら関税率に絞って掛け合う。ところが、トランプ政権が執着するのは、日本の対米投資の枠組みを固定することである。

グラフは日本企業の対米直接投資と国内への設備投資について、それぞれ総額とネット(純)ベースに分けて対比させている。ネットとは、国内投資の場合、実行総額から陳腐化設備の減価償却分を差し引いた新規設備の投資である。対米投資の場合、現地で回収した資金の再投資分を除く。大半は新規設備と推定できる。対米投資は総額では国内投資の3分の1の規模だが、ネットでは逆転し、2023、24年度で国内投資の2倍を優に超える。日本は最大の対米直接投資国だと石破首相は2月の訪米時にトランプ氏に擦り寄ったが、日本国内投資そっちのけで対米投資に奔走しているのが実態なのである。
筆者:田村秀男(産経新聞)
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2025年8月9日付産経新聞【田村秀男の経済正解】より
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