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中国が遼寧省大連市の造船所で、初の原子力空母建造を開始した可能性が高いことが、シンクタンク「国家基本問題研究所」(国基研、櫻井よしこ理事長)が入手した衛星写真の分析から明らかになった。山東省青島市の海軍基地では拡張工事が行われており、近郊には海軍飛行場が新設され、4隻目の空母就役に備えているとみられる。日本周辺での演習を行った空母「遼寧」と同じ青島を母港とすれば、東シナ海を経由した第1列島線から第2列島線にかけての活動が活発化することが予想され、日本の防衛体制のあり方にも影響を与えそうだ。
防衛省は「将来的な原子力空母の建造計画が存在するとの指摘もある」としていたが、国基研では今回、その「証拠」となりえる衛星写真の入手に成功した。
原子炉格納容器収める「枠」確認
建造場所は「大連船舶重工集団有限公司」が保有するドックで、中国国産としては初の空母「山東」が建造されたのと同じ場所だ。ドックでは2月以降、造船時に船体を支える角材である全長270メートル超の「盤木」の設置が確認された。
11月10日の衛星画像では長さ150メートル、幅43メートルの船体の一部が組み立てられ、内部に縦16メートル、横14メートルの枠が2つ設置されていた。このサイズの枠は通常動力空母「山東」や、3隻目の通常動力空母「福建」の建造時には確認されなかった。
米海軍の原子力空母を建造するバージニア州のニューポート・ニューズ造船所の衛星画像と照合したところ、建造中の原子力空母にはいずれも原子炉格納容器を収める場所に縦16メートル、横13メートルの枠が2つ設置されていた。

国基研の中川真紀研究員は「大連造船所の画像で確認された枠のサイズと形状は米国で建造中の原子力空母と酷似し、原子炉格納容器用の枠とみられる。中国軍は2030年代初めには米空母と同等の能力を持つ可能性のある空母を保有することになる」と語る。
配備見据え海軍基地や飛行場を拡充
一方、青島の海軍飛行場には、着艦訓練場や戦闘機のための格納庫が整備されている。青島海軍基地では4隻目の空母の随伴艦配備に備え、桟橋の増設や、船が帯びた磁気を消すための消磁施設の建設が進んでいる。

中国軍は第1列島線を越えて第2列島線を含む太平洋海域での演習を強化している。4隻目でカタパルト(射出機)式となる原子力空母が就役すれば、「福建」などの通常動力の空母に比し、より長期間太平洋上に滞在することが可能となる。

中川研究員は「現時点では中国の空母戦力は米軍より劣勢だが、4隻目が就役すれば日本周辺での活動をさらに活発化させ、自衛隊や米軍の監視・情報収集を常態化させる可能性があり、日本としても対応を迫られる」と指摘する。
筆者:有元隆志(産経新聞特別記者)
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