
防衛省
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陸海空自衛隊を一元的に指揮する初の常設組織として、統合作戦司令部が発足した。
防衛省のある東京・市谷に240人態勢で設けられ、初代司令官には前統合幕僚副長の南雲憲一郎空将が任じられた。平時の警戒監視や災害派遣、グレーゾーン事態、有事を問わず陸海空の部隊を一元的に指揮する。自衛隊がこのような常設司令部を持つことを歓迎したい。

統合作戦能力を高めれば、たとえ将兵や装備の規模がそのままであっても、抑止力と各種事態への対処力が高まる。
平和を守るため統合作戦司令部が円滑に機能することは重要だ。平時から運用を重ね、有事や災害時の対処能力を強化してほしい。
統合作戦能力の保有は日本にとって長年の課題だった。
先の大戦で日本の陸海軍は統合作戦をうまく実施できなかった。昭和18年に中部太平洋方面で海軍の指揮下に陸軍部隊を置く統合軍を編成した例はあったが不首尾に終わった。中央で陸海軍の作戦を司(つかさど)る軍令部門が並立していたからである。

現代では、統合作戦の必要性は一層増している。平成18年には、統合幕僚長をトップとする統合幕僚監部が設置され、統合作戦を実質的に担ってきた。
ただし、必要に応じて統合任務部隊をその都度編成する仕組みで即応性に課題があった。統幕長は、軍事的見地から防衛相を補佐したり、首相サイドに事態を説明したりする役割があり、作戦に全力を傾注できる態勢になかった。
統合作戦司令部は常時、部隊の運用を司るため有事やグレーゾーン事態、大災害が発生しても即応できる。統合作戦司令官を置くことで統幕長は防衛相の補佐などに集中できる。
統合作戦司令官は統幕長、陸海空各幕僚長と同様に、諸外国の軍の「大将」に相当する、四つ星の階級章をつける将に位置づけられた。

米国はハワイに司令部を持つインド太平洋軍傘下の在日米軍司令部を「統合軍司令部」に再編する計画を進めている。自衛隊の統合作戦司令部のカウンターパートにするためだ。
ただし、米メディアはトランプ米政権が支出削減へ在日米軍強化停止を検討中と報じた。日米同盟の連携上、米側も司令部を再編することが望ましい。
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2025年3月25日付産経新聞【主張】を転載しています
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