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問われているのは、日本の法令を順守しているかどうかだ。
埼玉県川口市に集住するトルコの少数民族クルド人を巡り、法務省が平成16年に「出稼ぎ」と断定する調査報告をまとめていた。
だが日本弁護士連合会が「人権侵害」などと問題視し、産経新聞が報じるまで調査内容が表に出ることはなかった。
この「封印」により、出稼ぎによる不法滞在が常態化しているとしたら問題だ。川口市ではクルド人らと住民らの軋轢(あつれき)も深まっている。政府は実態を調べて明らかにし、厳正に対処してもらいたい。
調査は、難民と認定されなかったクルド人らが各地で起こした裁判対応のために行われた。法務省が16年6~7月、難民申請者の多いトルコ南部の複数の村に職員を派遣し、「いずれも出稼ぎ村であることが判明」したなどとする報告書を作成、裁判所に提出した。
そこには、日本で働いた経験のある村民が「もっと稼ぎたかったから『難民』と言った」と話したことなどが記されていた。現行の難民認定制度が悪用されている実態が、浮き彫りになったということだ。
しかし調査内容は明らかにされず、不法滞在などの解消に活用されることもなかった。
16年からの約20年間で川口市内のクルド人は急増し、不法滞在状態も含め現在はおよそ2500人に上るとみられる。日本の法令や習慣を逸脱し、ごみの放置や深夜の騒音、迷惑駐車などの苦情が市に相次いでいるほか、無免許でのひき逃げや、性的暴行などの事件も起きた。
これらのトラブルは昨年12月の衆院予算委員会でも取り上げられ、鈴木馨祐法相が「強制退去が確定した外国人は、速やかに国から出ていっていただく」と答弁した。では、確定するまではどうするのか。
トルコのコルクット・ギュンゲン駐日大使は産経新聞の取材に「クルド人が経済的または社会的な理由で来日することはよくある」と述べ、「就労目的」との見解を示している。
昨年6月に改正入管難民法が完全施行され、これまで何回もできた難民申請が、3回目以降は強制送還の対象となった。その効果も見極めつつ、政府は出稼ぎ目的の不法滞在をなくす対策を強化してほしい。
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2025年1月21日付産経新聞【主張】を転載しています
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