短歌の書籍の表紙
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現代短歌のブームが続いている。俳句や川柳も含めたいわゆる短詩型(たんしけい)文学が、とりわけ若い世代の支持を集めているのが理由だ。
そもそも今の短歌は日本固有の伝統的な和歌の型を継承し、発展してきた近現代詩歌である。堅苦しいイメージもあるが、最近ではテレビ番組や広告にも取り上げられ、趣味として親しむ人が増えた。
読書離れ、活字離れといわれて久しい。昨今の短歌熱を機に日本語を深く味わい楽しむ文化が広がることを期待したい。
短歌は三十一文字の形式を踏襲して明治以降に広まった。正岡子規らによる短歌革新運動が有名だ。これまでは結社と呼ばれる団体などに所属して師に教わりながら学び発表するのが主流だった。ところが今は、どこにも所属せず自由に作品を発表する人が増えている。

そうした現代短歌が人気となったさきがけが、俵万智さんの歌集『サラダ記念日』(昭和62年)だ。等身大の若者の言葉で何げない日常を詠む魅力が、一般に広がる契機となった。
今また令和の短歌ブームといわれる。背景にあるのはインターネットとX(旧ツイッター)に代表される短文投稿型SNSの普及だ。フリーペーパーや、スマートフォンで手軽に作って投稿・観賞できる「短歌アプリ」も人気を集めている。かつての歌会のように交流を楽しみつつ発表できるのが特徴だ。
SNSから人気が出て、歌集がベストセラーになることも珍しくない。岡本真帆さんや岡野大嗣さん、木下龍也さんら新しい歌人が次々と登場した。

岡本さんの<ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし>はネットで大きな話題となり、初歌集『水上バス浅草行き』の出版につながった。
新型コロナ禍以降、ネット上には、「Z世代」と呼ばれる若者を中心に日常生活や将来の不安、非正規雇用といった社会的なテーマを詠んだ作品も多くみられるようになった。初心者も気軽に始めやすく共感や癒やしを求める現代人のニーズに合致したからだろう。
こうした流れは既存の短歌賞への応募が増えるなど従来の枠組みにも影響を与え、短歌コーナーを充実させる書店も相次いでいる。ことばをめぐる文化の深化と進化に期待したい。
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2026年1月4日付産経新聞【主張】を転載しています
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