インタビューに応じる岸田文雄元首相=12月15日、国会内(酒巻俊介撮影)
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岸田文雄元首相は12月15日、産経新聞の単独インタビューに応じ、高市早苗首相の国会答弁を巡り、中国が外交やSNSを通じて仕掛ける「情報戦」について「中国は閣僚レベルが世界に向け、かなりの発信をしている。日本の立場を閣僚や政治のレベルで発信していくことが大事だ」と述べた。中国の国際世論への働きかけに危機感を示した。
また、トランプ米大統領が日中の対立に積極的な言及を避けていることに関し「唯一の同盟国である米国に関心を持ってもらわなければならない」と強調した。
単独インタビューの詳細は次の通り。
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--令和4年に岸田政権下で国家安全保障戦略など安保3文書を閣議決定してから16日で3年を迎える
「国際社会の分断や対立が深刻化する歴史的な転換点の中で、国民の命や暮らしを守る、国の平和や独立を守るために首相としてその使命を果たさなければならないという強い思いで防衛力の抜本的強化に臨んだ。安保3文書に『反撃能力』を盛り込んだのもミサイル技術が急速に進化していることを踏まえ、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力の観点だ」
「戦い方が大きく変化」
--高市早苗政権は来年末までの安保3文書の改定を目指している
「前回の安保3文書の策定時においてはしっかりしたものをつくったと思っている。ただ、当時と今を比べてもドローン(無人機)をはじめ、戦い方が大きく変化してきた。3文書についても今一度しっかり議論をしていかなければならないということで高市首相も決断をしたのだろう」
「大事なのは私が3文書の策定に臨んだときと同様に、(防衛費の)数字ありきではなく、主体的な判断で真に必要な取り組みを積み重ねていくことがまず第一だ」
--防衛装備移転三原則の運用指針で、装備品の輸出を救難用や監視用などに限定している「5類型」の撤廃に関する考えは
「防衛装備移転については三原則は今までも重視してきたし、これからも大事だ。その上で、三原則の運用部分の現実的見直しを行うことはあり得る議論ではないか」

日中「懸念あるからこそ対話を」
--日中関係の悪化をどう見ているのか
「中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事のSNSへの投稿が大きく報じられたが、外交官として極めて不適切だ。ただ、日中は『戦略的互恵関係』の推進などを首脳レベルでも確認しており、懸念や課題があるからこそ対話をしていかなければならない」
「国際的な情報戦で中国は閣僚レベルでも世界に向け、かなりの発信をしている。日本も日本の立場をしっかり海外に発信していかなければならないが、その際に閣僚や政治のレベルでの発信が大事だ」
「気がかりなのは、日中が厳しいやり取りをする中でトランプ米大統領が発信していないことだ。レビット大統領報道官が『日米同盟は大事』『中国とも良好な関係を築いている』などとバランスをとるような発言をしている。唯一の同盟国である米国にしっかりと関心を持ってもらわなければならない」
--首相のこれまでの政権運営への評価は
「首相への支持が高いことは与党として歓迎すべきだ。ただ、国会は多党化時代を迎えており、物事を決めるのが極めて難しい環境にある。結果を出すべく努力をしてもらうことが大事だ。与党としてもしっかりとバックアップしなければならない」
聞き手:永原慎吾、水内茂幸(産経新聞)
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