
ライトアップされた神戸ポートタワー。LEDの鮮やかな赤が浮かび上がる=6月16日、神戸市中央区(藤崎真生撮影)
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その独特なフォルム(形状)や外装色から〝赤い貴婦人〟などと称される、ミナト神戸のランドマーク、神戸ポートタワー(神戸市中央区)。約2年半の工事を経て再オープンしたタワーは今年4月、リニューアル1周年を迎え、年間入場者は64万人を突破。新型コロナウイルス禍前(平成31年度)の約30万2千人から倍増し、神戸の観光拠点としての存在感を高めている。
「LED照明の採用で〝光の演出〟という魅力が加わったと思います」。タワーを管理・運営する神戸ウォーターフロント開発機構(KWD)の森倫也・再開発部再開発課長は、夜間照明に照らし出されて七変化するタワーの姿がリニューアル後の大きな特徴と胸を張る。

神戸ポートタワーは、世界初のパイプ構造の観光タワーとして昭和38年11月に開業。夜間のライトアップも開業時から行われており、「全日本タワー連盟に加盟する全国のタワーとしては、初めてライトアップされたタワー」(森課長)という。

リニューアルでは、それまで夜間照明として使用してきた白色光ランプなどからLED照明に変更。赤一色しか出せなかったタワー照明で、さまざまな色が出せるようになった。また、LEDの採用で瞬間的に色の切り替えもできるようになり、「音楽と連動させた光の演出など夜のイベントに広く活用できる」(森課長)と話す。
今回のリニューアルでは、タワー高層部の展望フロアも大きく改装。ギャラリーや回転床のカフェ&バー、光を使った体験型展示が楽しめるミュージアムなども設置した。
さらに、展望フロアの上には「屋上デッキ」を新設。地上約100メートルに設けたガラス張りのオープンエア型空中回廊だ。展望フロアを運営する通販大手、フェリシモの富田浩幸・神戸ポートタワー事業部長は「足元までガラス張りなので、最初は足がすくむお客さまもいらっしゃるが、神戸の眺望を360度で楽しんでほしい」とPRする。

神戸のまちを見守り続けてきたポートタワー。平成7年1月17日の阪神大震災では、地震発生から約1カ月後にライトアップを再開。真っ赤な外観が暗闇に浮かび上がり、神戸っ子を勇気づけた。
タワーが立つ神戸のウオーターフロントは発展を続ける。今春、1万人収容の大型アリーナが開業。地域活性化に向けた再開発が進んでいる。KWDの森課長は「タワーは開業から60年以上になるが、これからも神戸ウオーターフロントの揺るぎないランドマークであり続けたい」と力を込める。

360度の眺望「回天床」カフェ
今回のリニューアルで注目を集めているのが展望フロア3階のカフェ&バー「Ready go round(レディーゴーラウンド)」だ。ドーナツ状のフロアが自動で360度回転し、来店客はカウンター席で移り変わる神戸の風景を窓から眺めながら、食事を楽しむことができる。
かつて、こうしたいわゆる〝回転レストラン〟は各地のホテルやタワーの高層部、山頂展望台などでよくみられ、ピーク時の昭和50年代には全国に約50カ所あったとされている。しかし、維持管理にコストがかかることなどで回転を停止したり休業したりする施設が増え、現在、兵庫県内では神戸ポートタワーと須磨浦山上遊園(神戸市須磨区)の「回転展望閣」の2カ所のみとなっている。
実は、神戸ポートタワーの回転レストランもタワー開業の約60年前から営業をしている。KWDの森課長は「モーターと連動した複数のタイヤの上に床を載せている簡単な仕組み。回転数は制御盤で調整できる」と構造を説明する。ただ、装置そのものが古いので「毎日の点検は欠かせない」という。
フェリシモの富田部長は「(店は)年配の方には懐かしく、若い方には斬新で、そのレトロ感が人気を集めている」と話す。店では、地元で人気のパン屋さんが提供するオリジナルフレンチトーストなど時間帯で変わる多彩なメニューも用意しており、神戸の景色と食事がゆったりと楽しめるタワー内の人気スポットとなっている。
筆者:香西広豊(産経新聞)
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