オリンピック金メダリストであり、NPO JUDOs 会長でもある井上康生氏が、災害支援活動など2024年度の活動を振り返ります。
Kosei Inoue Judo Story

井上康生氏

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日本では春は旅立ちの季節です。私の勤務する東海大でも先日、卒業式(学位授与式)が行われ、学生たちが巣立っていきました。私も教え子を数人送り出しました。教え子たちのほとんどは子どもの頃から柔道をしてきた柔道家です。私は常々、柔道修行は忍耐力と自信を培い、生きる力を養うと話してきました。これからの新生活でもその生きる力を信じて挑戦を続け、豊かな人生を歩んでほしいと思います。

さて、私が理事長を務める認定NPO法人JUDOsでも、2024年度の活動を総括しながら新年度への準備を進めています。

2024年度は、国際柔道コーチングセミナーをはじめとする教育プログラムをはじめ、デフ柔道支援、受け身の技術を使って安全な転び方を研究・提唱する国際カンファレンス開催など、多種多様な事業を実施しました。

柔道畳を届けた石川県輪島市のもとやスーパー内のボランティア用無料宿泊スペース。畳の搬入は日本財団から派遣されたアスリートやボランティアが担った(Photo/JUDOs_ The Nippon Foundation)

また、昨年度は能登半島地震と豪雨で被災した、輪島市のもとやスーパーに柔道畳を届けました。

もとやスーパーは、輪島市の町野地域唯一のスーパーです。同店は、地震と水害で大きな被害に遭いながらも、店舗の一部を復興災害ボランティアの皆さん向けの無料宿泊スペースとして開放しています。ただ、本来はスーパーですから、床が冷たく硬いなど、寝泊まりするのに十分な環境ではなかったということです。そこで、少しでも環境を整えるのに役立ててもらおうと柔道畳の活用を立案。この思いに賛同してくださったJTセキグチ様、日本財団Herosプロジェクトとの協働という形で畳を届けることができました。

昨年、私は何度か石川県の避難所を訪れましたが、避難所が体育館などの場合、床が底冷えしてしまうと知り、その対策として弾力性と耐久性のある柔道畳が活用できるのではないかと考えていました。柔道畳はい草ではありませんが、畳は日本が誇る文化財です。少しでも畳の上でやすらいでいただけたらうれしく思います。

2023年8月、山火事被害にあったハワイ・マウイ島に柔道衣を寄贈。私も手荷物で運びました(Photo_JUDOs)

山火事で被災したハワイ・マウイ島の子どもたちにも柔道衣を

災害支援ということで言えば、昨年は、2023年夏に発生したハワイ・マウイ島での山火事で柔道衣が焼失してしまった子どもたちに柔道衣を届けた事業もありました。

私もハワイまで手荷物で柔道衣を運びましたが、その後、現地の子どもたちに無事に届き、とても喜んでくれたという報告を聞いて大変うれしく思いました。

JUDOsでは、これまでにもサイズアウトなどで着なくなった柔道衣や、施設改修等で不要になった柔道畳を引き取り、世界各地で必要としている人と場所に届けるリサイクル柔道畳・柔道衣寄贈事業を行ってきました。この事業が、自然災害からの復興支援という役割も担うようになってきています。

今、世界は気候変動の大きなうねりの中にあり、大規模な災害が各地で多発しています。災害は起きてほしくありませんが、自然には逆らえません。ただ、柔道というつながりを活かして災害に立ち向かい、連帯を示すことはできます。2025年度も我々にできることを、支援してくださる皆さまとともに行っていきたいと思います。

筆者:井上康生(柔道家)

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