ゲーム『アサシンクリードシャドウズ』を巡り、米実業家のイーロン・マスク氏と仏UBIソフトが異例の応酬を繰り広げた。
Elon Musk

ワシントンで共和党幹部との会合のため連邦議会を訪れたイーロン・マスク氏=2024年12月5日(ロイター)

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戦国時代の日本を舞台にし、主人公の一人を織田信長に仕えた黒人の「弥助」に設定したゲーム『アサシンクリードシャドウズ』を巡り、米実業家のイーロン・マスク氏がX(旧ツイッター)で「ひどいゲームだ」と投稿した。マスク氏と政治信条の異なるインフルエンサーがこのゲームを宣伝していたことがきっかけ。これに対し、開発したフランスのユービーアイ(UBI)ソフトの公式アカウントは、過去のマスク氏の言動に関する皮肉を投稿。トランプ政権のキーマンでもある著名実業家と仏大手メーカーの「公式」による異例の応酬となった。

発端は人気配信者の投稿

発端は、米インフルエンサーのハサン・パイカー氏による『シャドウズ』購入を薦める投稿。同氏は、アマゾン傘下の配信サービスTwitch(トゥイッチ)の人気配信者で、左派の政治コメンテーターでもある。昨年12月の米ビジネス誌フォーブス(電子版)の報道によると、パイカー氏が反ユダヤ主義的な主張を広めたとして、金融大手のJPモルガンなど有力企業3社がトゥイッチから広告を引き上げる騒ぎも起きた。来日中の今年2月には、都内の共産党本部を訪れて動画を配信している。

この投稿に対し、Grummzというアカウントで発信しているゲーム開発者のマーク・カーン氏は3月26日、UBIがシャドウズの宣伝のために「テロリスト擁護の配信者」であるパイカー氏に資金を投じていると批判。パレスチナ支持者のパイカー氏は過激な言動で知られ、2001年の米中枢同時テロを肯定するような発言が伝えられたこともある。

ゲーム『アサシンクリードシャドウズ』のイメージ画像。主人公は、侍として描かれる黒人の「弥助」と女忍者「奈緒江」だ(ユービーアイソフト提供)

カーン氏に賛同する形でこの投稿をリポストしたのがマスク氏で、「ハサンは詐欺師だ」「彼は金のためだけにひどいゲームを宣伝している」とコメントした。親イスラエルのマスク氏とパイカー氏の政治信条は正反対といえる。

ここで「アサシンクリード」というUBIの公式アカウントが登場。マスク氏に対し、「それはあなたのPath of Exile 2 アカウントを代わりにプレイしている人があなたに言ったことですか?」と投稿。これは、以前マスク氏がPath of Exile 2というゲームをライブ配信した際、高いレベルまで進んだ状態だったにも関わらず、あまり上手に見えなかったことから、他の上級プレイヤーにゲームを進めてもらったのではないか、という疑惑が浮上したことを皮肉ったものだった。

〝神社破壊〟で首相も答弁

人気シリーズ『アサシンクリード』の最新作で、20日に発売されたシャドウズは、実際の立場がよくわかっていない弥助を「伝説の侍」として描いたことや、ゲーム内で弥助が現存する神社の内部を破壊する映像が公開されたことなどで、発売前から物議を醸した。3月19日には参院予算委員会の質疑で神社内部破壊映像が取り上げられ、石破茂首相が「その国の文化や宗教に尊敬の念を持つのは当然で、そうでない行為があったら許さない、と発信することは重要だ」と答弁していた。

筆者:高橋寛次(産経新聞)

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