2019年10月、北京で行われた中国建国70年の軍事パレードに登場した、多弾頭型大陸間弾道ミサイル「東風41」(新華社=共同)
This post is also available in: English
米国とロシアの間に残っていた最後の核兵器管理の枠組み「新戦略兵器削減条約(新START)」が2月5日に失効した。
トランプ米大統領は急速に核兵器を増強する中国も新たな枠組みに加える必要があるとして協議を呼びかけている。中国が制約なしに核軍拡を続けることは、日本としても到底容認できない。中国は早急に協議に応じるべきだ。
新STARTは2011年に発効し、21年に5年間延長された。配備済みの戦略核弾頭数のほか、戦略爆撃機や大陸間弾道ミサイル(ICBM)といった核運搬手段の数を制限する内容だった。相互査察やデータ交換なども規定していた。
条約が失効した最大の責任はロシアにある。プーチン政権は22年からのウクライナ侵略で核の恫喝(どうかつ)を続け、23年には新STARTの履行を停止した。
トランプ氏は「より良い合意」を目指すべきだとして失効を容認した。中国も抑制する枠組みが必要だとするトランプ氏の認識は妥当である。

米露の保有核弾頭が各5千発以上なのに対し、中国は約600発と開きがある。しかし、中国は異例の速度で増産を進めており、30年までに1千発を超えるとの推計が有力だ。
そもそも新STARTは、戦場での使用が最も危惧される戦術核兵器を制限対象としていない。ロシアはまた、原子力推進式の魚雷や巡航ミサイルなど、条約が想定していなかった核運搬手段の開発・配備に血道を上げてきた。
実効性の高い核兵器管理の仕組みが求められており、中露は責任ある態度をとるべきだ。
戦後の国際秩序を支えてきた核拡散防止条約(NPT)は、米露英仏中の核保有5カ国に誠実な核軍縮交渉を義務付けている。新たな枠組みができない場合には、NPT体制への悪影響も懸念される状況だ。

ロシア、中国、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮と近接する日本は、極めて厳しい安全保障環境を直視する必要がある。唯一の戦争被爆国として日本が最終的な「核なき世界」を訴える意義はあるが、自らの安全が米国の「核の傘」で守られている現実は重い。「傘」の信頼性を高めるのに必要であれば、非核三原則の見直し議論も忌避すべきではない。
◇
2026年2月13日付産経新聞【主張】を転載しています
This post is also available in: English

