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キーウ郊外ブチャで虐殺犠牲者の追悼式典に出席し、慰霊碑に花を手向ける市民ら=2月24日(遠藤良介撮影)
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ロシアのプーチン大統領が主権国家ウクライナへの侵略を始めて3年が経った。
「ロシアとウクライナは一体だ」というプーチン氏の帝国主義的な妄執が侵略戦争を開始させた。力による現状変更を図る暴挙で明白な国連憲章違反である。改めて強く非難する。
ロシアの非道な攻撃で、祖国防衛に立ち上がったウクライナ軍は6万5千人が戦死し、のべ37万人が負傷した。無辜(むこ)のウクライナ国民は4万人余りが殺傷されてきた。戦争前に約4100万人だった人口のうち、今も約700万人が国外避難し、日本には約2千人が滞在中だ。
同情を禁じ得ない。
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停戦交渉は公平公正に
ロシアは、2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合した。この3年間で東部と南部の4州の大半を占領し、併合を宣言した。これらはウクライナの領土の約2割にも及ぶ。
このような無法は許されない。露軍は無条件で直ちに撤退すべきである。ウクライナの領土主権が守られなければ、国際秩序自体も動揺する。
トランプ米政権の発足で米政府の方針が大きく転換した。トランプ大統領は停戦実現に強い意欲を示し、米露間で交渉が始まった。
侵略戦争は終わらせるべきだが、当の被害者であるウクライナが交渉から外されているのはおかしい。米国と並んでウクライナを支援してきた欧州も蚊帳の外だ。今は軍事強国だけで物事を決する帝国主義的な時代ではない。公平公正な交渉を求めたい。
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トランプ氏が、今回の戦争で悪いのはウクライナのゼレンスキー大統領だといわんばかりの言動をとるのは目に余る。プーチン氏の身勝手な主張を受け入れているのか。
トランプ氏はラジオ番組で、ウクライナと欧州の頭越しの交渉に不快感を示すゼレンスキー氏について「彼(ゼレンスキー氏)が出席しないことは重要ではない」と語った。
自身のSNSでも「(ゼレンスキー氏は)選挙を経ていない独裁者だ。大した成功もしていないコメディアンが、勝てる見込みもなく、始める必要もなかった戦争に突入した。米国を説き伏せて3500億ドルもの費用を出させた」と言い放った。
さらに記者会見で「ウクライナは戦争を始めるべきではなかった。彼の支持率は4%に下がっている」と批判した。
ゼレンスキー氏が「私の支持率は57%だ」「トランプ氏はロシアの偽情報に取り込まれている」と反駁(はんばく)したのは当然だ。
ロシアは3年前、ウクライナの首都キーウの占領を目指し機甲部隊や空挺(くうてい)部隊で侵攻した。ウクライナが抗戦しなければ亡国の憂き目にあったろう。トランプ氏の認識はさかさまだ。
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石破首相の姿が見えぬ
ロシア軍は街頭でウクライナ国民を虐殺した。病院や幼稚園まで攻撃した。プーチン氏に対しては、約2万人ものウクライナの子供の露国内への連れ去りを指示した戦争犯罪の容疑で、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ている。
トランプ氏はプーチン氏の非道を直視し、暴言を撤回し、冷静な言動をしてほしい。
欧州各国からは、ゼレンスキー氏ではなくプーチン氏こそが独裁者だとし、ロシアは平和を望んでいないとの指摘が出ている。プーチン氏はウクライナの「国家消滅」をあきらめていないのではないか。
先のミュンヘン安保会議で岩屋毅外相は「侵攻をロシアが勝者になる形で終わらせてはならない。正しく終わらせないと中国のみならず世界に誤ったメッセージを与える」と語った。
この発言は妥当だが、石破茂首相のウクライナ問題への関心が高いようにみえないのは問題である。
欧州に位置するウクライナでの戦争は、日本を含むインド太平洋の安全保障と直結している。日本はウクライナと同様にロシアに北方領土を不法占拠されてもいる。石破首相はもっと停戦問題に関わるべきだ。
今後、一定の停戦が成立したとしても、プーチン氏のウクライナ再侵攻準備への時間稼ぎに利用されかねない。ロシアの再侵略を許さない態勢を整えなければ真の停戦とはいえない。
欧州やカナダはトランプ政権と調整の上で、ロシアの再侵略を許さない停戦維持の部隊を編成する必要があろう。日本の対応も問われている。
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2025年2月24日付産経新聞【主張】を転載しています
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