
政府備蓄米の随意契約による売り渡しの発表を行う小泉進次郎農林水産相(春名中撮影)
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米価が1年前の2倍まで急騰する深刻な事態が続いている。消費者への危機対応が求められていることを踏まえれば、異例の措置を講じることにも妥当性があるといえる。
小泉進次郎農林水産相が政府備蓄米の放出で、従来の競争入札をやめ、大手スーパーなどを任意に選ぶ随意契約で直接売り渡す新たな入札方式を発表した。
これにより、6月初旬にも5キロで2千円程度の備蓄米が店頭に並ぶことを目指す。市場介入しないとの原則で国の価格関与を否定した江藤拓前農水相時の方針を転換するものである。

価格高騰で「国産米離れが加速しかねない」とする小泉氏の認識はもっともだ。生産費高騰に苦慮する農業者への影響は考慮すべきだとしても適切な価格水準に戻すことは理に適(かな)う。
従前の手法では、備蓄米を放出しても価格を下げられなかった。その点を深く反省した上で新方式を混乱なく実施し、事態を打開できるかが問われる。
コメ問題への対応は石破茂政権がなすべき物価高対策の核心だ。石破首相や小泉氏は、その成否に大きな責任を負っていることを忘れてはならない。
これまでの競争入札では、高値を提示した業者に備蓄米を売り渡すことになるため、店頭価格が下がりにくいと指摘されていた。随意契約ならば、国が価格などの条件を決めた上で任意に受注業者を選べるため、価格低下を見込みやすくなる。
随意契約の導入と併せて、売り渡し先についても、全国農業協同組合連合会(JA全農)のような集荷業者ではなく、消費者に近い大手小売業者とした。適切に業者を選定し、全国にあまねく備蓄米が行き渡るようにしてもらいたい。

消費者の手元へと迅速に備蓄米を供給するためには、配送や精米なども円滑に進めなくてはならない。国は、地方に輸送する際の費用に限らず小売業者をきめ細かく支援すべきだ。
肝心なのは、備蓄米だけでなくブランド米も含めたコメ全体の店頭価格を抑制できるかどうかだ。石破首相は足元で4200円を超える平均価格を3千円台に下げる意向だが、卸売業者などには高値で入荷した在庫がある。それらの販売価格も十分に下がるのか。備蓄米とそれ以外で価格が二極化するようでは消費者の納得は得られまい。
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2025年5月27日付産経新聞【主張】を転載しています
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