一般病院の7割が赤字であることが、厚生労働省による令和6年度の「医療経済実態調査」で分かった。物価高や人件費の高騰で、人の配置が手厚く外科手術で医療資材を多く使う急性期の病院で経営が苦しい。
Finance Minister Katayama hospital funding

片山さつき財務相=12月11日午前、国会内(春名中撮影)

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一般病院の7割が赤字であることが、厚生労働省による令和6年度の「医療経済実態調査」で分かった。

物価高や人件費の高騰で、人の配置が手厚く外科手術で医療資材を多く使う急性期の病院で経営が苦しい。

調査は、8年度からの医療サービスの価格を決める「診療報酬改定」の基礎資料になる。診療報酬は税金や保険料、患者の自己負担で成り立っている。

医療機関には、病床が20床以上の「病院」と0~19床の「診療所」がある。診療所は黒字を維持したが利益率は縮んだ。

人材や資金などの医療資源が限られている。重要なのは、病院でも診療所でも、地域の救急や、高齢化で必要性が高まっている在宅医療、介護との連携などで役割を果たす医療機関を重点的に支援することだ。報酬改定では、よりメリハリをつけ、患者の健康と命をしっかり守れる体制を構築したい。

記者会見する国立大病院の院長ら=東京都千代田区

調査結果では、一般病院の1施設当たりの利益率は7・3%の赤字だった。医療法人が運営する診療所は4・8%の黒字で、個人経営の診療所は28・8%の黒字だった。

経営悪化の原因の一つは、医療サービスが公定価格で運営され、人件費や物価の上昇を価格に転嫁できないことだ。一層の経営努力も必要だが、厳しい経営を踏まえた報酬改定が求められよう。

政府は緊急支援策として7年度の補正予算案に5341億円を計上し、病院や診療所、保険薬局などに幅広く支援する。高市早苗首相は報酬改定の「効果を前倒し」するものと説明している。

医療機関を漫然と支援するのでは問題は解決しない。地方によっては人口減少で患者が減り、年齢構成も変わっているのに、それに応じた診療科の転換が進まず、病院の再編が遅れているところもある。

報酬改定では、地域で必要な役割を果たしているにもかかわらず経営が苦しい医療機関を重点的に評価し、再編を促さねばならない。

救急車を集中的に受ける大病院と、初期対応後の患者を受ける中小病院との連携をさらに評価するのも一案だ。新たな感染症発生時の診療で自治体と協定を結ぶ診療所を評価する方法もあるのではないか。

2025年12月4日付産経新聞【主張】を転載しています

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