中国軍制服組トップの張又俠・中央軍事委員会副主席と同委員の劉振立・統合参謀部参謀長が粛清された。世界最大規模の軍隊が動揺する異常事態だ。
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中国の習近平国家主席(新華社=共同)

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中国軍制服組トップの張又俠・中央軍事委員会副主席と同委員の劉振立・統合参謀部参謀長が粛清された。

詳細は不明だが、日本の隣国で、世界最大規模の軍隊が動揺しているのは間違いない。異常事態である。

中国国防省によると両氏は「重大な規律・法律違反の疑い」で調査される。特に張氏は習近平国家主席(中央軍事委主席)に次ぐ軍事委ナンバー2で、習氏の「盟友」だっただけに衝撃は大きい。

2022年に新たな陣容で発足した軍最高指導機関の中央軍事委は今までに3人が粛清されたが欠員補充がなかった。そこで、習氏の軍への影響力は盤石ではないとの見方もあった。

だが習氏は昨年10月、規律検査担当の張昇民上将を中央軍事委副主席に抜擢(ばってき)した。今回新たに2人が粛清され、同委は習氏と張氏の2人だけになった。

2022年の第20回中国共産党大会後の中央軍事委員会のメンバー。5人が粛清され、習近平氏と張昇民上将だけとなった(Courtesy of Inconvenient Truths ©Jennifer Zeng)

中華人民共和国建国の父で独裁者だった毛沢東は「政権は銃口から生まれる」と語った。中国軍は国家ではなく共産党の指導を受ける軍隊(党軍)とされてきた。その党軍が今回の粛清で習氏個人に盲従する軍隊になった恐れがある。「異常事態」の真の意味はここにある。

軍機関紙、解放軍報は「中央軍事委の主席責任制を踏みにじった」と張又俠氏らを非難した。主席責任制とは同委の権限を習氏に集中させることだ。

粛清された張又俠・中央軍事委員会副主席=2024年4月、中国山東省青島(共同)

張又俠氏は中国軍が苦杯をなめた1979年の中越戦争への従軍経験もあり、台湾への軍事侵攻に消極的だったとの見方がある。米国は習氏が軍創設100年の2027年までに台湾侵攻の準備を完了するよう指示したとみている。習氏が台湾併合のため私軍化した中国軍を動かすのではないか。そのような懸念が取り沙汰されている。日本をはじめ国際社会は傍観しているときではない。

一方で、中国軍内の汚職が依然深刻で規律が相当低下していると伝えられる。軍幹部の相次ぐ粛清で、全面侵攻よりも、台湾首脳部への〝斬首作戦〟などによる限定的攻撃で併吞(へいどん)に動く可能性もある。

日本は中国の異変を最大限の警戒感をもって注視しなければならない。「台湾有事は日本有事」だからだ。「習氏の軍隊」出現の恐れに留意し、衆院選では抑止力向上など日本を守り抜く論戦を深めるべきだ。

2026年1月28日付産経新聞【主張】を転載しています

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