This post is also available in: English
中米のカリブ海で生まれ、サトウキビを原料とする蒸留酒「ラム」が、日本で進化しようとしている。千葉県南房総市でラムの蒸留所を稼働させている「ペナシュール房総」(青木大成代表)が、千葉大の微生物学者と連携。バクテリアや酵母の働きなどを解析し、「エステル」と呼ばれる化合物が有する、熟れた南国のフルーツに似た官能的な香りが特徴的なラムの実現を目指す。類似のラムは世界でも希少で、「ジャパニーズ・ラム」が国際的な知名度を上げる好機として期待される。
蒸留所は限られ、世界的に希少
ラムの原料となるサトウキビは、大航海時代にコロンブスが米大陸へと持ち込んだといわれる。その後、欧州各地からの移住者が続々と大西洋を渡ったが、故郷で親しんだ酒の味をどうしても忘れられなかった。
アルコールは、酵母が糖分を分解して作られる。そこで移住者らは、身近に育つサトウキビから故郷の酒を再現しようと試みた。その結果、同じラムでもスペイン系はシェリー酒、フランス系はコニャック、英国系はスコッチウイスキーとの関係が深いとされる。英国海軍やカリブの海賊といった海の男が好んだイメージが強く、「老人と海」などの作品で知られる文豪のヘミングウェーも愛した。
世界で流通するラムの大半は、サトウキビから砂糖を製造した際にできる「糖蜜(モラセス)」から作られ、「トラディショナルラム」と呼ばれる。一方、収穫したサトウキビの搾り汁から直接作られたものが「アグリコールラム」だ。
筆者:小野晋史(産経新聞)
◇
2025年1月4日産経ニュース【びっくりサイエンス】より
This post is also available in: English