在日ロシア連邦通商代表部=令和4年7月、東京都港区(松井英幸撮影)
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警視庁公安部は在日ロシア通商代表部の元職員を不正競争防止法違反(営業秘密開示)容疑で書類送検した。元職員は、すでに帰国している。
元職員は首都圏の工作機械関連会社で営業担当を務めていた元社員にウクライナ人とかたって接触し、飲食接待や金銭を提供し、同社の機密情報を入手していた疑いがある。
始まりは元社員が帰宅途中、「道を教えてもらえないか」と尋ねられたことだった。標的を定め偶然を装って接触を図る、ヒューミント(人的接触)と呼ばれる古典的なスパイの手口だが、送検容疑に捜査当局の苦労がしのばれる。
公安部は一昨年もスパイ活動を行った疑惑がある中国籍の女を摘発したが、送検容疑は詐欺だった。日本にはスパイ行為そのものを取り締まる法律がないためだ。対外的な防諜組織も脆弱(ぜいじゃく)である。
「スパイ防止法案」は昭和60年に議員立法で提出されたが、野党の反対などで同年に廃案となった経緯がある。

2月8日投開票の衆院選では、自民党が国家インテリジェンス機能の抜本的強化や対外情報機関の設置を公約に掲げている。連立を組む日本維新の会もスパイ防止法の制定や「対外情報庁」の創設を掲げた。
国民民主党は「スパイ防止を含むインテリジェンス態勢整備推進法の制定と情報機関の統合による情報収集・評価体制の強化」をうたった。同法案はすでに昨年、議員立法として衆議院に提出している。参政党も独自の防止法制案を策定した。
公明党と立憲民主党が組んだ中道改革連合の公約にはスパイ防止への直接の言及はない。立民はこれまで防止法の制定に否定的だった。日本共産党は「国民を監視し、基本的人権を侵害する」として反対している。
いつまでも日本が「スパイ天国」であっていいはずがない。いい機会である。衆院選の争点として、スパイ防止法や対外情報機関の必要性について、大いに論じ合ってほしい。
インテリジェンス(情報)の取り扱いは国家の命運を分ける一大事である。そして国際社会における諜報の主役は、ヒューミントからシギント(通信・電波諜報)に移っている。
日本にも本格的な情報機関と根拠法が必要である。
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2026年1月23日付産経新聞【主張】を転載しています
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