タイ国籍の12歳の少女が東京出入国在留管理局に助けを求め、保護された。少女は東京・湯島の個室マッサージ店で違法に働かされ、男性客に性的サービスを行っていたとされる。
Bunkyoku massage parlor human trafficking

タイ人少女が働かされていたとされる個室マッサージ店が入るビル=東京都文京区

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国の恥と受けとめなくてはならない。警察は関係国と協力し、事件の背後関係を徹底的に捜査してほしい。

タイ国籍の12歳の少女が9月、東京出入国在留管理局に助けを求め、保護された。少女は東京・湯島の個室マッサージ店で違法に働かされ、男性客に性的サービスを行っていたとされる。

少女は6月、母親と来日し、店に預けられた。母親は翌日に姿を消し、台湾当局に別件で身柄を拘束された。警視庁は店の経営者の男を労働基準法(最低年齢)違反容疑で逮捕し、母親についても児童福祉法違反の疑いで逮捕状を取った。

タイ警察も人身取引などの容疑で母親の逮捕状を取り、台湾からの母親の移送先は日本を優先する考えを示している。

警視庁が東京・湯島の個室マッサージ店から押収したメニュー表=11月6日、警視庁本富士署(橋本愛撮影)

少女は店の台所で寝泊まりしながら、1カ月に約60人の客に性的サービスをさせられていたという。売り上げは全額を店に渡し、半分は母親の口座に送金されていた。

タイで少女は普通に中学校に通っていた。12歳では、外見上も年端も行かない子供であることは明らかだったろう。どれだけつらい思いで東京での日々を送ったかは、想像を絶する。店や、娘を置き去りにした母親への怒りを強く覚えるとともに、少女のサービスを受けた客の存在もおぞましい。

犯罪の背景にあるのは貧困だろう。それを狙い撃つ人身売買ブローカーや反社組織の存在が必ずある。全容を明らかにし、厳罰に処してもらいたい。

タイ北部ペチャブン県の自宅で乳児の子守をしながら取材に応じる、マッサージ店で働かされていた少女の祖母=11月12日(共同)

平成17年には、刑法に人の売買を処罰する「人身売買罪」が新設された。未成年者の売買は7年以下、わいせつ目的の売買は10年以下の拘禁刑に処せられる。労働基準法(最低年齢)の1年以下と比しても重い罰則だが、立証には困難が伴い、適用例はまだ少ない。より積極的な運用を望みたい。

国連は12年に「女性及び児童に特別の考慮を払いつつ、人身取引を防止し、戦う」ことを目的に「人身取引議定書」を採択した。

これを受けて政府は「人身取引対策行動計画」を策定、令和4年の改定では「『世界一安全な国、日本』を実現するため、人身取引対策の充実、強化を図る」とうたった。今回の事件処理は、国際的にも注目されていると銘記すべきである。

2025年11月26日付産経新聞【主張】を転載しています

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